**「スワップ・ストラテジー付きスプレッド調整」は少し専門的ですが、FXでは金利差(スワップ)+通貨間の価格乖離(スプレッド/歪み)**を同時に狙う考え方です。
裁定“そのもの”というより、中期運用向けの戦略として使われます。
以下、概念 → 構造 → 具体例 → 数式 → リスクの順で説明します。
目次
1. 基本概念(何を狙う戦略か)
この戦略は次の2つを同時に狙います。
- スワップポイント(正の金利差)を受け取り続ける
- クロス通貨の歪み(スプレッド)が時間とともに調整される
つまり:
「スワップで日々プラスを積み上げながら、
通貨間の価格差が元に戻るのを待つ」
という発想です。
2. なぜ「スプレッド調整」が必要か
高金利通貨をロングすると:
- スワップはプラス
- しかし為替変動リスクが大きい
そこで、関連通貨を組み合わせて為替リスクを相殺します。
例:
- 単純な高金利通貨ロング → 一方向リスク大
- スプレッド調整 → 方向性を中立化
3. 典型的な構造(3通貨構成)
例:TRY(トルコリラ)を含むケース(概念例)
通貨金利(イメージ):
- TRY:高金利
- USD:中金利
- JPY:低金利
ポジション構成
- USD/JPY を買い(JPY売り)
→ 低金利を売る - USD/TRY を売り(TRY買い)
→ 高金利を買う
結果:
- TRYロング・JPYショートに近いが
- USDを共通項にすることで変動を緩和
4. スワップの合成(重要)
スワップは通貨ペア単体ではなく、合成で考える必要があります。
合成スワップ
合成スワップ ≒
(USD/JPYの受取スワップ)
+(USD/TRYの受取スワップ)
※ 売買方向によって符号は逆になります
👉 「合成でプラスか?」が最重要
5. スプレッド(乖離)の考え方
理論関係(例)
TRY/JPY ≒ USD/JPY ÷ USD/TRY
この関係からズレた場合:
- TRY/JPYが割安 → TRYロング有利
- TRY/JPYが割高 → 調整待ち
👉 スワップを受け取りながら乖離修正を待つ
6. 実際によく使われるペア構成
王道パターン
| 高金利 | 中金利 | 低金利 |
|---|---|---|
| MXN | USD | JPY |
| ZAR | USD | JPY |
| TRY | EUR | JPY |
例(MXN)
- 買い:USD/MXN(MXNロング)
- 売り:USD/JPY(JPYショート)
→ 高スワップ+方向性中立
7. 数式で見るスプレッド調整
合成レート
クロス合成 = USD/JPY ÷ USD/MXN
乖離率
乖離率 = 実勢クロス ÷ 合成クロス − 1
乖離が大きいほど、平均回帰(調整)期待値が高まる。
8. この戦略の強み
- ✅ 毎日スワップが入る
- ✅ 一方向ベットになりにくい
- ✅ ボラティリティ耐性が高い
- ✅ 中期〜長期で有効
9. 最大のリスク(必読)
① 高金利通貨特有のクラッシュ
- 政策金利急変
- 財政不安
- 流動性枯渇
→ スプレッド調整を待てず強制ロスカット
② スワップ改悪
- ブローカー都合
- 突然マイナス転換
③ 想定以上に乖離が拡大
- 「戻るはず」が数か月戻らない
10. 実務での設計ルール(重要)
- レバレッジは最大でも3倍以下
- 含み損に耐える証拠金余力
- 「スワップ > 最大想定乖離損失」の構造
- 政策金利イベント前は縮小
11. まとめ(超重要)
スワップ・ストラテジー付きスプレッド調整は
「裁定」ではなく「耐久型の平均回帰戦略」
- 短期爆益 ❌
- 長期安定 ⭕
- 数学 × 金利 × リスク管理が鍵
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