MiltonMarketsのレバレッジ × スプレッド弾性モデルについて

*レバレッジ × スプレッド弾性モデル
(Leverage–Spread Elasticity Model)**は、
市場参加者のレバレッジ行動が Bid–Ask スプレッドを「どれだけ・どの速さで」変形させ、
そのスプレッド拡大が再びレバレッジ制約を強化するか
を定式化するモデルです。

これまで扱ってきた

  • レバレッジ × ボラティリティ
  • 流動性クラッシュ回避
  • マイクロヘッジ型レバレッジ

市場マイクロ構造レベルまで落とし込んだモデルです。


目次

1. スプレッド弾性とは何か

定義

Spread Elasticity=%ΔSpread%ΔNet Order Flow\text{Spread Elasticity} = \frac{\%\Delta \text{Spread}}{\%\Delta \text{Net Order Flow}}Spread Elasticity=%ΔNet Order Flow%ΔSpread​

  • 注文フローが少し偏るだけで
    スプレッドが大きく動く市場は弾性が高い

2. なぜレバレッジがスプレッドを動かすのか

直感

  • 高レバ主体は時間的余裕がない
  • 指値を待てず成行に寄る
  • マーケットメイカーは在庫リスクを嫌う

👉 レバレッジは“急がせる”


3. 基本因果ループ(核心)

レバレッジ上昇
 ↓
注文の緊急性↑(Market Order化)
 ↓
Order Flow の非対称化
 ↓
Spread 拡大
 ↓
約定コスト↑・流動性↓
 ↓
レバレッジ制約強化(証拠金・VaR)
 ↓
強制売買

4. 数理的枠組み

(1) スプレッド関数

St=S0+ασt+βOFt+γLtS_t = S_0 + \alpha \sigma_t + \beta |OF_t| + \gamma L_tSt​=S0​+ασt​+β∣OFt​∣+γLt​

  • OFtOF_tOFt​:ネット注文フロー
  • γLt\gamma L_tγLt​ が本モデルの核心

(2) スプレッド弾性

εt=StOFt=β+γLtOFt\varepsilon_t = \frac{\partial S_t}{\partial OF_t} = \beta + \gamma \frac{\partial L_t}{\partial OF_t}εt​=∂OFt​∂St​​=β+γ∂OFt​∂Lt​​

👉 レバレッジが高いほど
同じ注文量でスプレッドが広がる


5. レバレッジの内生化

マージン制約

LtEtmtVtL_t \le \frac{E_t}{m_t \cdot V_t}Lt​≤mt​⋅Vt​Et​​

スプレッド拡大 →

  • 約定価格悪化
  • P&L低下
  • EtE_t↓Et​↓

👉 Lが自己収縮(ただし遅れる)


6. 非線形性と臨界点

弾性の跳躍

  • 低レバ:弾性ほぼ一定
  • 高レバ:ある点で急上昇

εt={ε0Lt<Lε0+k(LtL)2LtL\varepsilon_t = \begin{cases} \varepsilon_0 & L_t < L^* \\ \varepsilon_0 + k(L_t – L^*)^2 & L_t \ge L^* \end{cases}εt​={ε0​ε0​+k(Lt​−L∗)2​Lt​<L∗Lt​≥L∗​

👉 流動性が突然消える理由


7. マイクロ構造との接続

マーケットメイカーの反応

StInventory Risk×LclientsS_t \propto \text{Inventory Risk} \times L_{\text{clients}}St​∝Inventory Risk×Lclients​

  • 顧客が高レバ=在庫引き取りたくない
  • 指値撤退 → 板が薄くなる

8. 実例

2020年3月 米国債市場

  • レバファンドの成行売り
  • ディーラーが板を引く
  • スプレッド急拡大

2022年 英国Gilt危機

  • LDIのレバ売却
  • 通常時の数倍のスプレッド

9. 他モデルとの関係

モデル接続点
ボラティリティクラスタSpread↑ → ボラ↑
Margin PressureSpread↑ → 証拠金↑
Liquidity Crash弾性跳躍点

10. 実務的指標

早期警戒

  • Spread / Vol 比率の急上昇
  • 小出来高での Spread 拡大
  • 成行比率 × レバ推定値

11. 回避戦略への含意

  • レバはスプレッド感応型で制御
  • 指値待機余力の確保
  • マイクロヘッジで成行依存を減らす

12. 核心まとめ

  • スプレッドは「静的コスト」ではない
  • レバレッジがスプレッドを歪める
  • 弾性の跳躍がクラッシュの正体
  • 危険は価格変動より板の反応

\ MiltonMarketsはスリッページの保証がある! /

目次