レバレッジ・レジームシフトモデル(Leverage Regime Shift Model)は、金融市場における急激な変動(特にクラッシュやボラティリティの急上昇)を説明するための理論モデルです。
主に、**レバレッジ(借入)と市場の状態(レジーム)**の相互作用に注目します。
以下、基礎から順に詳しく解説します。
目次
1. 基本的な考え方
このモデルの核心は次の3点です。
- 市場参加者はレバレッジを使う
- 価格変動によりレバレッジ制約が変化する
- ある閾値を超えると、市場が別の「レジーム」に移行する
👉 その結果、
**平常時(安定レジーム)**から
**危機時(不安定・クラッシュレジーム)**へ
非連続的に移行します。
2. レバレッジとは何か(前提)
レバレッジの定義
レバレッジ=自己資本資産
- レバレッジが高いほど、小さな価格変動で大きな損益
- 金融機関・ヘッジファンド・証拠金取引で重要
3. レジーム(Regime)とは?
レジームとは
市場の支配的な状態・構造
例:
- 低ボラ・高流動性レジーム
- 高ボラ・流動性枯渇レジーム
レバレッジ・レジームシフトモデルでは、
| レジーム | 特徴 |
|---|---|
| 安定レジーム | 高レバレッジ、低ボラ、価格は緩やか |
| 危機レジーム | レバレッジ縮小、強制売却、急落 |
4. モデルのメカニズム(核心)
(1) 安定レジーム
- ボラティリティが低い
- VaRなどのリスク指標が小さい
- 金融機関はレバレッジを拡大
- 資産価格が上昇 → さらにレバレッジ拡大
👉 自己強化ループ(正のフィードバック)
(2) ショックの発生
- 小さな価格下落
- マクロニュース
- 流動性の低下
この時点ではまだ小さな変化。
(3) レバレッジ制約の発動
- 価格下落 → 自己資本減少
- レバレッジ比率が上昇
- マージンコール/VaR制約
👉 強制的な資産売却が発生
(4) レジームシフト(相転移)
- 売却 → 価格下落
- 価格下落 → さらなる売却
非線形・連鎖的崩壊
これが「レジームシフト」。
5. 数理的な枠組み(簡略)
典型的には以下を組み合わせます。
状態変数
- 資産価格 Pt
- ボラティリティ σt
- レバレッジ Lt
制約条件
Lt≤VaR(σt)1
動学
- σt↓⇒Lt↑
- Pt↓⇒Lt↑⇒売却⇒Pt↓
👉 非線形ダイナミクス
6. なぜ「レジームシフト」なのか?
重要なのは、
- 変化が連続的ではない
- ある閾値を超えると急激に性質が変わる
物理学でいう
- 相転移
- 臨界点
と同じ構造。
7. 実際の金融危機との関係
代表例
- 2008年 リーマン・ショック
- 1998年 LTCM危機
- 2020年 コロナショック初期
共通点:
- 危機前:低ボラ・高レバレッジ
- 危機時:一斉デレバレッジ
8. 他モデルとの違い
| モデル | 特徴 |
|---|---|
| ブラック–ショールズ | 定常・連続 |
| GARCH | ボラ変動はあるが構造一定 |
| マルコフ・レジーム | 状態切替は外生 |
| レバレッジ・レジームシフト | 内生的に危機が発生 |
👉 市場内部の構造が危機を生む点が最大の特徴。
9. 投資・リスク管理への示唆
実務的な教訓
- 低ボラ=安全ではない
- レバレッジの累積が最大リスク
- 分散が効かない局面が存在
実践的指標
- レバレッジ比率の急上昇
- ボラ低下+信用拡大
- マージン要件の変化
10. 関連研究・理論背景
- Adrian & Shin(2010):Liquidity and Leverage
- Brunnermeier & Oehmke
- Minskyの金融不安定性仮説
- 複雑系・エージェントベースモデル
まとめ(要点)
- レバレッジが市場を不安定化させる
- 危機は外生ショックではなく内生的
- レジームは閾値を超えると突然切り替わる
- リスクは「静かな時」に蓄積される
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