「ブローカー特性“逆相関”裁定」という語も、一般的なFX教科書に載る“正式名称”ではありませんが、実務のアルゴ・裁定(アービトラージ)の世界では “ブローカー間の価格特性の逆相関を利用して利益を取る戦略” を指して使われる場合があります。
以下は、プロップトレーダーやHFT系裁定の考え方に沿った内容で、できるだけ体系的に説明します。
目次
🔎 ブローカー特性“逆相関”裁定とは?
■ 定義(わかりやすく)
複数のFXブローカーが提示する
価格の特徴(遅延・滑り・流動性提供元の違い・配信間隔のクセ)
に “逆相関” が観測されるとき、
A社とB社の価格が互いに反対方向へブレる特性を利用して
同時に逆方向のポジションを取り、乖離の収束で利益を得る裁定手法
のことを指します。
🧩 なぜ逆相関が生まれるのか?
ブローカーは通常、複数のLP(リクイディティプロバイダー)から価格を受け取って配信しています。
すると、次のような“癖”が生まれます:
✔ LPの種類や優先度が違う
A社 → 欧州系銀行価格寄り
B社 → ECN価格主体
というように、同じ通貨ペアでも“微妙に別の市場”を見ている状態になる。
✔ 配信速度・処理遅延の差
- A社は高速で価格更新する
- B社は0.2秒遅れるがスプレッドが安定
→ 急変時に 片方は先行して動き、もう片方は遅れて逆方向に跳ね返る などが起きる。
✔ スプレッド制御アルゴリズムの差
- A社は急変時に“広げる”タイプ
- B社は広げず、Bid と Ask のどちらかだけがズレる
→ “方向性のあるブレ” が生まれやすい。
👉 これらの差が 逆相関 として現れることがある。
例:
- A社が「上」に振れやすい
- B社が「下」に振れやすい
こうした“癖”を利用するのが逆相関裁定です。
📈 仕組み:逆相関裁定(ブローカー間)
■ 基本構造(同時建て)
- A社で買い
- B社で売り
そして、
A社の価格が上方バイアス
B社の価格が下方バイアス
ならば、
乖離が広がったときにエントリー → 収束したらクローズ
で理論上は利益が残る。
🔍 具体例(数値で理解)
| A社 | B社 | |
|---|---|---|
| 時刻1 | 150.000 | 150.000 |
| 時刻2 | 150.030(上に振れやすい) | 149.990(下に振れやすい) |
価格差=4 pips の逆方向乖離
これが通常は数秒〜10秒以内に収束する場合:
- A社:買い → 利確(または同値)
- B社:売り → 利確
合計すると 差分が利益として残る。
🧠 この手法の“本質”
✔ 同一通貨ペアでも、
「ブローカー=異なる市場」 になりうる
✔ その結果、
価格の“癖”が反対方向に出ることがある
✔ その“反対方向の歪み”の収束を取るのが逆相関裁定
⚠️ 注意点・難易度
逆相関裁定は“存在すれば極めて強力”ですが、実際には難しい側面もあります。
❌ スリッページ(片方だけ滑る)
❌ 約定拒否(高頻度は嫌われる)
❌ レイテンシ差が自動的に不利方向へ働くことも
❌ 乖離が安定して逆相関するブローカーの組み合わせが極めて少ない
❌ 同時クローズのタイミング管理が難しい
❌ ブローカー規約で裁定・レイテンシアービトラージ禁止の場合がある
🔧 実務での運用方法(プロップ流)
✔ 1. ブローカー間のTickデータを比較
- 相関係数
- 分布
- 乖離の頻度
- 乖離の“方向性の偏り(逆相関)”
- 平均収束時間
✔ 2. 逆方向に動く癖のある組み合わせを抽出
例:
- A社 vs B社 = 時間帯ごとに逆方向に飛びやすい
- 特に指標直後などで強い逆相関が出る
✔ 3. 裁定アルゴを構築
- 乖離閾値
- クローズ閾値
- スプレッド補正
- レイテンシ補正
- 不利方向乖離のストップルール
✔ 4. 小ロットでテスト → 実ロットへ
🎯 誰向き?
- 裁定に興味がある中級以上
- データ分析できる人
- ブローカーのシステム差に敏感な人
- 自動売買(MT4/MT5・Python)の運用者
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