「フラクタル理論ベースのマルチタイム(MTF)戦略」を、概念(フラクタルとは何か)→設計(時間足の役割分担)→具体戦略テンプレ(エントリー/損切り/利確/追撃)→検証と落とし穴、の順で **“実戦で再現できる形”**に落とし込んだ長文解説です。
※投資助言ではなく一般的な教育目的です。

1. まず整理:トレード界隈の「フラクタル」は2種類ある
「フラクタル理論」と言っても、混ざりやすいので最初に分けます。
1-1) 学術寄りのフラクタル(自己相似・スケーリング)
価格変動が、完全ではないにせよ 似た形が異なる時間スケールで現れやすい(自己相似)という見方。
ここから「上位足の波の中に下位足の波が入れ子で存在する」「ボラは時間とともにスケールする」といった発想が出ます。
1-2) ビル・ウィリアムズ系の“Fractals”指標(5本足の山谷)
トレーダーがよく使う「フラクタル」はこっちが多いです。
- 上フラクタル(山):中央の高値が、左右2本ずつより高い(合計5本で山)
- 下フラクタル(谷):中央の安値が、左右2本ずつより低い(合計5本で谷)
要するに **“スイング高値/安値の機械的な定義”**です。
これがMTFと相性が良いのは、山谷(構造)を時間足ごとに同じルールで抽出できるから。
以降は、
- “自己相似(入れ子の波)”の考え方
- “5本フラクタルで山谷を刻む”実装
を両方使って、戦略としてまとめます。
2. フラクタル×MTFの本質:「上位足の波に、下位足で乗る」
フラクタルをトレードに使うときの核心はこれです。
- 上位足:大きな波の方向・重要な山谷(流れ)
- 中位足:押し目/戻りの形・ゾーン(入る場所)
- 下位足:実際の執行(入るタイミング・損切りの小型化)
フラクタルは、どの時間足でも同じ“山谷の定義”で構造を切れるので、
「上位足の“谷から谷まで”の上昇波の中で、
下位足の小さな谷(押し目)を拾っていく」
という設計が綺麗にできます。
3. まず用意する“共通言語”=フラクタル構造(山谷)でトレンドを定義
移動平均より、フラクタル構造(HH/HLなど)で定義した方がMTFが噛み合いやすいです。
3-1) 上昇トレンド(フラクタル版)
- フラクタル高値が更新(HH)
- フラクタル安値が切り上がる(HL)
- 直近のHLを割れていない
下降はその逆(LL/LH)。
3-2) “トレンドの終わり”もフラクタルで決める
上昇なら、上位足で
- 直近HL(フラクタル谷)を明確に割れたら、上昇トレンドの破壊(少なくとも調整入り)
これが、利確や撤退の判断軸になります。
4. MTF戦略の設計図:時間足を3階層に分ける
おすすめの組み合わせ例(あなたの生活時間に合わせて選ぶ)
- スイング寄り:週足/日足(環境)→4H(ゾーン)→1H or 15M(執行)
- デイトレ寄り:日足(環境)→1H(ゾーン)→15M or 5M(執行)
- スキャ寄り:4H(環境)→15M(ゾーン)→1M or 5M(執行)
※スキャでフラクタルはノイズが増えるので、フィルタ必須
フラクタルは「確定に2本待つ(5本で中央確定)」性質があるので、
1分足だと“遅れ”が気になることが多いです。
まずは 日足/4H/1H/15Mあたりが扱いやすい。
5. ルールの核:フラクタルを「点」ではなく「ゾーン」に拡張する
フラクタルの山谷は点ですが、相場は点で反転しません。
そこで“ゾーン化”します。
5-1) フラクタルゾーンの作り方(超実務)
上位足(例:4H)の「直近フラクタル谷」を基準に、
- 谷の安値〜谷を作った5本の実体(またはヒゲ)を含む範囲
- あるいは谷の安値 ± ATR(14)×0.2〜0.4(ざっくり帯)
みたいに、厚みを持たせた帯にします。
なぜゾーンが必要?
- 谷を一瞬割って、すぐ戻る(“ストップ狩り”っぽい動き)が普通にある
- 点に損切りを置くと刈られやすい
- ゾーンで見ると「割れたのか、刺しただけか」が判断しやすい
6. 具体戦略テンプレ①:王道「上位足トレンド×下位足押し目(フラクタル階段)」
ここから戦略を“テンプレ化”します。まず王道から。
6-0) 戦略の狙い
- 上位足のトレンドに沿って
- 中位足の押し目ゾーンへ引きつけ
- 下位足の“構造転換(小さなトレンド復帰)”で入る
- 利益が伸びたら、フラクタル谷(押し安値)の階段でストップを上げる
つまり **「フラクタルの入れ子構造をそのまま売買ルールにする」**戦略です。
6-1) ルール(上昇の例)
環境認識(上位足:日足)
- 日足で上昇トレンド
- HH/HLが継続
- 直近HL未割れ
- 日足の直近フラクタル谷を“防衛ライン”とする
ゾーン作成(中位足:4H)
- 4Hで直近のフラクタル谷ゾーンを作る
- 価格がそのゾーンに近づくのを待つ
※“待つ”のが最大の優位性
エントリー(下位足:1H or 15M)
- 下位足で価格がゾーンに入った後、
下位足の下降構造が壊れて上昇構造へ戻るサインで入る- 例:下位足で「LHを上抜けて高値更新」
- 例:下位足の上フラクタル(山)を上抜け
「ゾーン到達で即買い」だと逆張り化します。
“一度売りが止まって、買いが勝ち始めた”証拠を待つのがコツ。
損切り
- 損切りは2案のどちらかに統一(混ぜない)
- 保守:中位足ゾーン下限の外
- 攻め:下位足の直近フラクタル谷の外(小さくなるが刈られやすい)
利確・伸ばし方
- 基本は「伸ばす」前提で、降り方を決める
- トレーリング:下位足のフラクタル谷が切り上がるたびにストップをその下へ
- 部分利確:次の上位足フラクタル山(抵抗)付近で一部利確、残りは追随
6-2) “勝ちやすい形”の条件(フィルター)
このテンプレは、上位足がレンジだと弱いです。
以下のどれかがあると強くなります。
- 上位足の直近高値を更新した直後(ブレイク後の初押し)
- 上位足の波が加速している(押し目が浅い)
- 押し目が「速い下げ→鈍る→反転」になっている(下位足で反転が明確)
7. 具体戦略テンプレ②:「フラクタル・ブレイクアウト×リテスト(順張りの最強系)」
押し目買いだけでなく、フラクタルはブレイクアウトとも相性が良いです。
7-1) 狙い
- 上位足の上昇中
- 中位足でレンジ(調整)ができる
- レンジ上抜け(フラクタル山抜け)で入る
- 押し戻し(リテスト)で増し玉 or 追撃
7-2) ルール(上昇)
- 上位足:上昇トレンド
- 中位足:レンジの上限が“フラクタル山”として複数回出ている
- エントリー:中位足の上フラクタルを終値で上抜け
- 損切り:レンジ下限(または直近フラクタル谷)下
- 追撃:ブレイク後、下位足で小さな押し目(下位足フラクタル谷)形成→上抜けで追加
この型は「押し目が来ない」強いトレンドでも乗れます。
8. 具体戦略テンプレ③:フラクタル×ピラミッディング(増し玉)を“壊さず”組む
ユーザーが前に興味を示していた「増し玉」とも、フラクタルは相性が良いです。
ポイントは **“勝ってから増やす”**を徹底し、増やす場所をフラクタルで機械化すること。
8-1) 増し玉の基本ルール
- 含み損の方向に増やさない(ナンピン禁止)
- 最大段数を決める(例:最大3段)
- 段が増えるほどロットを落とす(例:1.0→0.7→0.5)
8-2) フラクタルを使った増し玉トリガー(王道)
- 1段目:中位足ゾーン+下位足構造転換で入る
- 2段目:価格が前回の下位足上フラクタル(山)を更新し、押し目(下位足谷)を作ったら追加
- 3段目:同様に、もう一段フラクタル階段ができたら追加
ストップの上げ方
- 追加するたびに「全体ストップ」を直近の下位足フラクタル谷の外へ引き上げて、
全体の“実質リスク”を増やさないようにする
(これができないと、段数が増えるほど一撃で吐きます)
9. “フラクタル理論”っぽさを増やす:スケーリング(時間足でボラが変わる)を利用する
フラクタル的な見方では、ボラティリティは時間とともにスケールします。
これを実務で使うと、時間足ごとに損切り幅・利確幅の常識が変わるのが腑に落ちます。
9-1) 実務的な使い方:ATRは時間足ごとに違う
- 日足のATRは大きい
- 15分のATRは小さい
だから損切りを「pips固定」にすると歪みます。
フラクタル×MTFでは、損切りは
- 上位足の構造(HL/LH)で決める
- 執行は下位足で小さくする
という2段構えが理にかなっています。
10. トレンドとレンジを見分ける(フラクタル戦略の生死)
フラクタル系は、レンジでも山谷が出るので“それっぽく”見えます。
でも期待値が出るのは基本 トレンド局面です。
10-1) レンジ判定(実務)
上位足で
- フラクタル高値更新が止まる
- フラクタル安値切り上げが止まる
- 山谷が交互に同じ範囲で出続ける
→ “構造が進んでない”状態
このときは、トレンドフォローMTFは見送るか、別戦略(レンジ回帰)に切り替える方が綺麗です。
11. ありがちな落とし穴(ここで9割が壊れる)
11-1) フラクタルは「確定が遅れる」
5本フラクタルは中央が確定するのに、左右2本が必要。
つまり **“2本分の遅れ”**があります。
対策:
- エントリーはフラクタル確定を待たず、**構造転換(LH崩し/HL形成)**で先に入る
- ただし、損切りやトレーリングの“基準”としてフラクタル確定を使う(安全)
11-2) “どの時間足のフラクタルを優先するか”が曖昧
時間足が増えるほど、山谷の情報が増えすぎて迷います。
対策:
- 上位足:方向(YES/NO)だけ
- 中位足:ゾーン(入る場所)だけ
- 下位足:トリガー(入る瞬間)とストップだけ
と役割を固定。
11-3) ゾーンが広すぎて、どこでも入れる状態になる
ゾーンが広いと「反転の証拠」が弱い場所でも入ってしまう=逆張り化。
対策:
- ゾーン到達“だけ”で入らない
- 下位足の構造転換が出たところだけ
11-4) 指標・イベントで構造が壊れる
重要指標前後は、山谷の“意味”が変わる(一瞬で高安が更新される)。
対策:
- 重要指標前後はルールで除外
- 触るなら“指標後の二段目”のみ、など別ルール化
12. 検証(バックテスト)のやり方:フラクタル戦略は「パラメータ固定」が強い
フラクタル×MTFは、いじり始めると無限に最適化できます。
だから検証はこうやると壊れにくいです。
12-1) 最初に固定するもの
- 時間足(例:日足/4H/15M)
- フラクタル定義(5本固定)
- エントリートリガー(構造転換 or フラクタル山抜け、どちらか)
- 損切り方式(ゾーン外 or 下位足谷外、どちらか)
- 追随方式(フラクタル谷でトレーリング)
12-2) 変えていいもの(最小限)
- ゾーン厚み(ATR係数)
- 段数(ピラミッド最大2~3)
- 部分利確の有無
12-3) 見るべき指標
- 勝率より 平均利益/平均損失(損益比)
- 最大ドローダウン
- 連敗の深さ(メンタル耐性に直結)
- “トレンド日だけ”抽出した成績(ここが強ければOK)
13. すぐ使える「完全テンプレ」例(上昇トレンドの押し目買い)
最後に、最小の裁量で回せるテンプレを1つ置きます。
(下降は反転させれば同じです)
13-1) 時間足
- 上位:日足(方向)
- 中位:4H(ゾーン)
- 下位:15M(エントリー)
13-2) 方向(YES/NO)
- 日足がHH/HLで上昇
- 直近の日足フラクタル谷(HL)未割れ
→ YESなら買い目線、NOなら見送り
13-3) ゾーン
- 4Hの直近フラクタル谷周辺を帯にする(厚みはATR×0.3など)
- 価格が帯に入るまで待つ
13-4) エントリー(15M)
- 帯に入った後、15Mで
- 直近LHを上抜け(小さな下降が崩れた)
- その上抜けで買い
13-5) 損切り
- 15Mの直近フラクタル谷の外(攻め)
もしくは4Hゾーン下限の外(守り)
※どちらかに固定
13-6) 追随・利確
- ストップは15Mフラクタル谷が切り上がるたびに下へ置き直し
- 日足の次のフラクタル山(抵抗)で一部利確、残りは追随
まとめ
フラクタル理論ベースのMTF戦略は、突き詰めると
- 上位足のフラクタル構造でトレンド判定(方向固定)
- 中位足フラクタル谷/山をゾーン化(入る場所固定)
- 下位足の構造転換やフラクタル抜けで執行(入る瞬間固定)
- フラクタル階段でストップ追随(伸ばし方固定)
という「入れ子構造」をそのままルールにする戦略です。
裁量を入れるなら、入れる場所は ゾーン厚み と エントリーの厳しさ の2点に絞ると破綻しにくいです。

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