以下は「FXのスキャルピング」と「ロンドン・フィックス(WMR 16:00 London)逆張り」を、“なぜ動くのか(市場構造)→どう組み立てるか(手順)→どこで死ぬか(リスク)→検証と運用”の順で、できるだけ実戦目線でまとめたものです。
※投資助言ではなく一般的な解説です。スキャは約定・スプレッド・滑り・手数料で期待値が簡単に崩れます。まず小ロット+検証前提で。
1. スキャルピングの本質(“当てる”より“取り切る”)
スキャで勝ちやすい人がやっているのは、ざっくり言うと次の最適化です。
- 方向を当てる:精度 55% でも十分
- 損小利小を“損極小・利そこそこ”へ:負けを浅く、勝ちを伸ばしすぎない
- コスト(スプレッド・滑り)を最小化:これが一番デカい
- やる時間帯を限定:乱高下の“良い乱高下”だけ触る
スキャは「予想」ではなく「執行技術」です。
同じシグナルでも、注文の出し方(成行/指値、分割、逃げ方)で結果が別物になります。
2. スキャに向く通貨・時間帯・ボラの条件
2.1 通貨ペア(基本)
- EURUSD / GBPUSD / USDJPY:板・流動性・スプレッドの面で有利になりやすい
- クロス円(GBPJPYなど):値幅は出るが滑りやすく“荒い”ので難易度高
2.2 時間帯(ざっくり)
- ロンドン序盤〜NY序盤(流動性↑):スキャ向き
- 東京時間の真ん中(凪):スキャはやりにくい(ただしレンジ職人なら可)
- 重要指標前後:初心者は基本触らない(期待値が崩れる)
3. スキャの“3つの型”
型A:レンジ回帰(Mean Reversion)
- 前提:短期で行き過ぎ→戻りが起きやすい局面
- 武器:ボリンジャー、VWAP、直近高安、オーダーブック(見れるなら)
- 弱点:トレンド開始日に焼かれる
型B:ブレイク即回収(Micro Breakout)
- 前提:小さなレンジの上/下抜けで短い加速が起きる
- 武器:直近高安ブレイク+出来高/ティック増
- 弱点:ダマシが多い(損切りの速さが命)
型C:ニュース後の二段目(Post-news continuation / fade)
- 前提:指標で跳ねた後、**二段目(追随)か全戻し(フェード)**が発生
- 武器:初動を見送って“形ができてから”入る
- 弱点:難易度高い(経験者向け)
このあと話す「ロンドン・フィックス逆張り」は、基本的に 型A(回帰) の変種です。
4. スキャの設計図(期待値を崩さないためのチェックリスト)
スキャの期待値を一撃で壊すのはたいていこの4つです。
- スプレッド拡大(薄い時間・指標・急変)
- 滑り(成行連打・荒い通貨)
- 損切りの遅れ(“戻るはず”病)
- 連敗後のロット増(取り返し病)
なので、ルールはシンプルでも、最低限これだけは決めます。
- 1回のトレードの最大損失(例:口座の0.2〜0.5%)
- 1日の最大損失(例:0.5〜1.5%で強制終了)
- 1日の最大トレード回数(例:10回まで)
- 禁止時間(指標前後、流動性が薄い時間 など)
- エントリーの条件よりも、“撤退条件” を明文化
5. ロンドン・フィックスとは何か(なぜ“変な値動き”が出るのか)
5.1 何が起きている?
「ロンドン・フィックス(London 4pm fix)」は、資産運用(株式・債券・指数)などで使われるFXベンチマークで、伝統的にロンドン時間16:00のレート(WMR/WM Reuters系)を参照する取引が多いです。BISの講演でも、4pm Londonのフィックスが広く使われてきた点が説明されています。
その結果として、フィックス前後は 需給(実需・ヘッジ・リバランス) が集中しやすく、出来高が増えやすい。FSBの文書でも、WMR 4pm fixの時間帯に取引量の増加が示唆されています。
5.2 フィックスの“計算窓”が重要
昔は「60秒窓」が強調されましたが、WMRは2015年に算出方法が見直され、**より長いウィンドウ(一般に5分)**へ変更された、という文脈が規制当局の分析でも扱われています。
また、LSEG/WM(WMR)の最新の方法論文書が公開されています(細部は通貨や市場で異なる場合あり)。
トレード側の発想:
「16:00ぴったりで反転する」より、
“計算窓に向けて歪み→窓の後に反動” のほうが起きやすい。
5.3 どんな“歪み/反動”が観測されている?
学術・当局系の分析では、フィックス周りで「注文フロー集中」「短期の反転(リバーサル)」が指摘されています。たとえばNorges Bank系の研究では、フィックス計算窓に取引が極端に集中し、その直後に小さな価格反転が見られる旨が要約されています。
また、主要フィキシング周りのリターンが“逆回転”するようなスタイライズド・ファクトを示す研究もあります。
ここから「逆張り」の着想が出ますが、“常に反転する”わけではないのがミソで、月末・リバランス・リスクオフなどで素直に突き抜ける日もあります。
6. 日本時間で何時?(ロンドン16:00→JST)
ロンドン16:00は、英国がサマータイム(BST)かどうかで変わります。
- 英国がGMT(冬時間):16:00 London = 16:00 UTC → 翌日 01:00 JST
- 英国がBST(夏時間, UTC+1):16:00 BST = 15:00 UTC → 翌日 00:00 JST
つまり日本から見ると、だいたい 深夜0時 or 1時 に“山場”が来ます。
(この「深夜帯」ゆえに、リテールは集中力が落ちやすい=事故りやすい点も大事。)
7. ロンドン・フィックス逆張りの考え方(コンセプト)
狙いはシンプルに言うとこれ:
- フィックスに向けて、指数連動・ヘッジ・実需で一方向に偏る
- 計算窓を通過すると、
- 執行需要が一巡する
- その歪みに対して反対側が入りやすい
- よって 短期的に“戻り”が出やすい日がある
ただし“日による”。
なので戦略は「フィックスだから逆張り」ではなく、
「フィックスの“偏り”が見えた日だけ、短期回帰を取りに行く」
にするのが安全です。
8. 実戦ルールの作り方(入る前に決める)
ここでは、リテールでも再現しやすい枠組みで書きます。
(ティックデータや板があるなら精度は上がりますが、まずは1分足〜5分足想定。)
8.1 観測するもの(最低限)
- 対象ペア:まずは EURUSD / GBPUSD / USDJPY のどれか1つに固定
- 時間軸:1分足 + 5分足(方向は5分、入るのは1分)
- 指標:
- 直近の高安(過去30〜60分)
- 5分足の移動平均(20EMAなど)
- 当日の高安、前日高安
- スプレッド(異常拡大なら撤退)
8.2 “偏りがある日”の定義(例)
フィックス前の一定時間(例:JST 23:30〜00:00 または 00:30〜01:00)で、
- 5分足が同方向に3本以上(じり上げ/じり下げ)
- 直近高安を更新している
- 押し目/戻りが浅い(=逆方向の抵抗が弱い)
これを「偏りあり」とみなす。
偏りがない(レンジで行ったり来たり)日は、フィックス逆張りの優位性が薄いので見送り。
9. エントリーの2タイプ(安全寄り→攻め寄り)
タイプ1:窓通過後の“戻り確認”で入る(安全)
基本形:窓の後(例:16:00通過後)に反転の形が出てから逆張り。
- 条件例
- 1分足で反転足(包み足、長ヒゲ、Wトップ/ボトム)
- 直近の急伸/急落に対して、戻りの初動が出た
- 入り方
- 反転足の高値/安値ブレイクで小さく入る
- 伸びたら建値に近づけて逃げ道を作る
メリット:だましを減らせる
デメリット:取り分は小さくなる
タイプ2:窓の直前〜最中の“行き過ぎ”を逆張り(攻め)
これは難易度が上がります。
「計算窓に向けて加速した最後の伸び」を取るイメージ。
- 条件例
- 1分足の実体が連続して伸び、戻しがほぼない
- 直近の平均変動(ATR的なもの)を明確に超える
- 入り方
- 分割で逆張り(1/3→1/3→1/3)
- 損切りは必ず固定(“無限ナンピン禁止”)
メリット:うまくいけば大きい
デメリット:月末・リバランス日に即死しやすい
初心者はタイプ1推奨。
10. 損切り・利確の現実解(スキャはここで決まる)
10.1 損切りの置き方(例)
逆張りの損切りは基本「形が壊れた場所」。
- 直近高値/安値の少し外
- 反転足のヒゲ先の外
- “ここを超えたら戻りではなく継続”という地点
損切り幅を先に決めてからロットを決めます。
(ロットを先に決めると損切りがズレて破滅しがち)
10.2 利確の置き方(例)
ロンドン・フィックス逆張りは、長く持つほど不確実性が増えます。
狙いは「歪みの解消」の範囲に限定するのが無難。
- 第一利確:直近の戻り高安、もしくは1分足20EMA
- 第二利確:フィックス前の起点付近(偏りが出始めた価格帯)
- 伸びたら追う、ではなく、戻ったら降りるが基本
11. “やってはいけない逆張り”チェック
フィックスだから逆張り、で死ぬ典型がこれ。
- 月末・四半期末(リバランスやヘッジが大きく、偏りが“本物”になりやすい)
- 当日すでに強トレンド(5分足・15分足で一方向)
- 重要指標が近い/直後で荒れている
- スプレッドが普段の2倍以上
- 自分の集中力が落ちている(深夜帯の最大の敵)
12. ロンドン・フィックス逆張りを“戦略”にするための検証方法
感覚で触ると、たまたま勝った負けたになります。
最低限、これを数えるだけで精度が上がります。
12.1 記録する項目(テンプレ)
- 日付
- 対象ペア
- 英国がBSTかGMTか(=JST 0時/1時どっちだったか)
- フィックス前の偏り:あり/なし(自分の定義でOK)
- エントリー時刻
- 損切り幅(pips)
- 利確幅(pips)
- スプレッド(通常/拡大)
- 結果
- 反省(“ルール違反”の有無だけでOK)
これを30回〜100回取ると、「自分のルールだと偏りがある日は勝率○%、損益比○」が見えてきます。
12.2 期待値の見方(超重要)
- 勝率が高くても、負けがデカいと終わる
- 勝率が低くても、勝ちが大きければ成り立つ
スキャはだいたい 勝率と損益比のバランスで作ります。
例:勝率55%なら損益比0.9でも残る、など(コスト込みで再計算必須)。
13. ロンドン・フィックス周りの“現象”をもう少しだけ真面目に(根拠の雰囲気)
「フィックス周りは出来高が増える」「歪みが出る」という話は、当局文書や研究でも繰り返し扱われています。FSBの検討ではフィックス時刻の取引量増加が示され、ベンチマーク設計や市場慣行の見直しが議論されました。
また、フィックス窓の周辺でスプレッド/ボラがどう変化するかの分析資料もあります。
規制当局(FCA)の分析では、2015年の方法変更を含む環境変化の中で、フィックス取引行動が検討されています。
つまり「魔法の時間」ではなく、構造的に注文が寄りやすい時間なので、短期的な歪みと反動が“起きやすい日がある”という理解が現実的です。
14. 実務的なコツ(リテールが勝ちやすくなる工夫)
14.1 注文は“分割”が強い
逆張りは特に、1回でドンと入ると滑りや心理で崩れます。
- 1/2入る → 伸びたら残り → すぐ建値寄せ
- もしくは 1/3ずつ(ただしナンピンの無限化は禁止)
14.2 “その日の最大損失”で止める
深夜は判断が鈍ります。
フィックス逆張りは1回の事故が大きいので、日次のブレーキが必須です。
14.3 取るのは“最初の戻り”だけ
歪み解消は一発目が一番取りやすい。
2回目3回目の逆張りは、だいたい“ただの逆張り癖”になります。
15. よくある質問(先回り)
Q1. ロンドン・フィックス逆張りは今も効く?
「毎日効く」ではありません。ただ、研究でもフィキシング周りのリターンの偏り・反転が議論されており、構造要因が完全に消えたとは言いにくいです。
だからこそ「偏りが見えた日だけ」「窓後の形確認」など、条件付きにして期待値を作るのが現実解です。
Q2. どの足がいい?
再現性は「5分で環境認識、1分で執行」が無難。
秒足は執行環境(約定の速さ、スプレッド、滑り)に左右されすぎます。
Q3. 損切りは広い方がいい?
逆張りスキャで損切りを広げると、勝率は上がっても破滅しやすい。
広げるなら、その分ロットを下げる(損失固定)しかありません。
16. まとめ(最小の実装)
最後に、初心者でも事故りにくい“最小実装”を置きます。
ルール(例:タイプ1のみ)
- JST 0:00 or 1:00(ロンドン16:00)前の30分で、5分足が同方向に偏っている日だけ監視
- フィックス通過後、1分足で反転の形(長ヒゲ、包み、Wトップ/ボトム)が出たら逆張り
- 損切りは反転足の外(固定)
- 利確は「最初の戻り」中心(直近の起点までで降りる)
- 1日最大損失に達したら終了
これでまず30〜100サンプル検証すると、あなたの環境(ブローカー、スプレッド、生活リズム)で“残るかどうか”が見えてきます。


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