LandPrimeのボラティリティ・クラスタリング × スプレッド（Vol-Cluster Spread）について

以下では、**ボラティリティ・クラスタリング × スプレッド（Vol-Cluster Spread）**という概念を、できるだけ体系的・実務的に詳しく説明します。
※学術で一般化した用語ではなく、クオンツ／裁量トレーダー界隈でしばしば使われる“考え方”や“手法名”として扱われることが多いので、その文脈で整理します。

🔍 1. ボラティリティ・クラスタリング（Volatility Clustering）とは

ボラティリティが時間的に塊（クラスタ）を形成する現象を指します。
・「荒れる時期が続く」「落ち着いている時期が続く」
という市場の特徴で、ARCH/GARCH などのモデルの前提にもなっています。

特徴

高ボラ期 → 高ボラが続きやすい
低ボラ期 → 低ボラが続きやすい
ボラティリティはランダムウォークではなく“自己相関”を持つ

🔍 2. スプレッド（Spread）とは

ここでのスプレッドは、一般に：

資産価格の差（ペアトレードのスプレッド）
ボラティリティ指標の差（例：短期 vs 長期 IV）
金利・クレジット・通貨などの乖離

など広く使われます。

Vol-Cluster Spread の文脈では、多くの場合：

「ボラティリティ構造の乖離（スプレッド）を取引する」

という意味で用いられます。

🧩 3. Vol-Cluster Spread の基本概念

Vol-Cluster Spread とは簡単に言うと：

ボラティリティのクラスタ性（持続性）を利用し、
複数のボラティリティ指標・期間・資産間のスプレッドをトレードする手法

です。

より実務的には：

✔️ ボラティリティが“高ボラ群”と“低ボラ群”に分かれる

✔️ その差（Spread）が統計的に意味のある状態にある

✔️ そこに回帰性 or トレンド性を利用してポジションを取る

という発想になります。

🧪 4. 主なアプローチ

以下はクオンツやオプション系でよく使われる Vol-Cluster Spread の例です。

① 短期 vs 長期ボラティリティのスプレッド

例：

短期 IV（例：7日）
長期 IV（例：30日）

通常、長期 IV は安定し、短期 IV はボラティリティ・クラスタリングを強く受けます。

👉 短期 IV が急騰 → しばらく高ボラが続く傾向
👉 短期 IV が落ち着いた → 当面は低ボラが続きやすい

短期 – 長期 = スプレッドをトレードすることで：

平常時 → スプレッドは安定
異常時 → 短期 IV が急変し歪みが生まれる（チャンス）

② 資産間のボラティリティ・スプレッド

例：

株式指数 vs 通貨
BTC vs ETH
コモディティ vs 株式

各市場でボラティリティ・クラスタリングが発生するタイミングは異なるため：

ボラティリティが急上昇した資産
vs
依然として低ボラの資産

の差を取るペアトレードが成立します。

③ GARCH 系モデルによる“期待ボラ”同士のスプレッド

推定 GARCH ボラ
市場インプライドボラ（IV）
の乖離を使う。

例：

GARCH 推定ボラ >> 市場 IV
→ 市場は低ボラを織り込みすぎている（IV 買い優位）

④ ボラティリティ・リスクプレミアムのスプレッド

実現ボラ（RV）
インプライドボラ（IV）

が異なるのはよく知られていますが、これもスプレッドとして扱えます。

RV のクラスタリングが強くなる局面でプレミアムが急変しやすいため、

RV vs IV のスプレッド取引は Vol-Cluster Spread の典型です。

🎯 5. Vol-Cluster Spread のトレード戦略例

戦略 A：短期 IV の“クラスタ”を利用した均しトレード（Mean Reversion）

短期 IV が急騰
長期 IV との差（Spread）が極端に広がる
Spread が“平均へ回帰する”前提で
　→ 短期IV売り / 長期IV買い のペア構築

戦略 B：クラスタ継続性を使ったトレンドフォロー

高ボラが発生すると、高ボラ期が続く傾向
Spread が拡大し“トレンド化”する
Spread のブレークアウトで順張りエントリー

戦略 C：複数資産間のブレーク・スプレッド

BTC のボラが急騰
ETH のボラはまだ上がっていない
→ ETH ボラ買い（遅行反応）
→ BTC ボラ売り

というように“ボラティリティ伝播（Vol Spillover）”を利用。

🧠 6. メリット・デメリット

✔️ メリット

ボラティリティは価格より予測しやすい（クラスタ性があるため）
方向中立（デルタニュートラル）で取れる
イベントドリブンにも強い

❗ デメリット

ボラティリティ・スプレッドは突然のイベントで崩壊
コスト（オプション売買・ヘッジ）が高い
モデル誤差に敏感になる

📌 まとめ

Vol-Cluster Spread とは：

ボラティリティの“クラスタ性（持続性）”と
複数のボラティリティ指標・期間・資産間の“スプレッド”を組み合わせた
統計的・クオンツ的トレード手法

であり、主に以下を狙う：

平均回帰（Mean Reversion）
トレンドフォロー（Trend）
マルチアセット間のボラ伝播（Spillover）