JadeFOREXのスプレッド・コンディショナル裁定(Conditional Spread Arbitrage)について

以下では、プロップファームやクオンツ運用で実際に使われる概念に基づき、
「スプレッド・コンディショナル裁定(Conditional Spread Arbitrage)」
を専門的かつ体系的に解説します。


目次

◆ ✔ スプレッド・コンディショナル裁定とは(本質)

Conditional Spread Arbitrage =
“特定の条件(Condition)下でのみ、スプレッドの異常・歪みを裁定する手法”

ポイントは 条件付き(Conditional) であること。

通常の裁定(Arbitrage)は、「歪みが発生したら即裁定」ですが、
コンディショナル裁定は、特定の市場状態(Regime)でのみ発動 させるのが特徴です。


◆ ✔ なぜ「条件付き」なのか?

理由はシンプル:

スプレッドの歪みは、いつ発生しても利益になるわけではない。
市場状態に応じて勝ちやすさが変わる。

具体的には、以下の「市場条件(Conditioning Factors)」に依存することがわかっています:

● ボラティリティ Regime(高ボラ / 低ボラ)

  • 高ボラ → スプレッドが拡大しやすいが逆行リスクも大
  • 低ボラ → スプレッドの平均回帰が効きやすい

● セッション(東京 / ロンドン / NY)

  • セッションごとにペアの振る舞いが異なる
  • 例:ロンドン時間はEUR系のスプレッドが歪む

● マイクロストラクチャー(流動性)

  • 板の厚さ
  • 隠れ流動性
  • LP(リクイディティプロバイダ)の挙動

● トレンド状態(Regime Switching)

  • トレンド中はスプレッドが平均回帰しない
  • レンジ中は回帰しやすい

◆ ✔ 数式で表すと?

典型的には、スプレッドを以下のようにモデル化する:Spreadt=μt+ϵtSpread_t = \mu_t + \epsilon_tSpreadt​=μt​+ϵt​

ここで

  • μt\mu_tμt​:時間変化する“平衡スプレッド”(Kalman Filterなどで推定)
  • ϵt\epsilon_tϵt​:歪み

そのうえで、条件付き確率で裁定を発動する:P(ReversionCondition)>θP(\text{Reversion}|\text{Condition}) > \thetaP(Reversion∣Condition)>θ

つまり、「この市場状態なら平均回帰する確率が十分高い」ときだけエントリーする。


◆ ✔ 具体的な戦略構造

以下の3ステップで構成されることが多い:


Step 1. スプレッドの算出(2通貨 or 3通貨)

例:EUR/JPY と USD/JPY のスプレッドSt=EURJPYtβUSDJPYtS_t = EURJPY_t – \beta \cdot USDJPY_tSt​=EURJPYt​−β⋅USDJPYt​

β は回帰係数(OLS or Kalman)


Step 2. “条件づけ”の判定(Conditional Filtering)

例:以下の条件を満たした場合のみ裁定発動:

  • ボラティリティが閾値以下
  • トレンド強度が低い(ADX < 25 など)
  • 過去N期間の平均回帰成功率が高い
  • 市場流動性が十分にある時間帯
  • スプレッドのZ-scoreが一定以上

※条件はモデルによって全く異なる


Step 3. 裁定(Arbitrage)を実行

Z-score で発動:ZS=StμtσtZS = \frac{S_t – \mu_t}{\sigma_t}ZS=σt​St​−μt​​

  • ZS > Z_entry ⇒ スプレッド縮小方向にショート
  • ZS < -Z_entry ⇒ スプレッド拡大方向にロング
  • ZS が 0 付近に戻ったら決済(平均回帰補足)

◆ ✔ コンディショナル裁定が強い理由

✔ 条件なしの裁定は危険

スプレッドは構造変化(Regime Shift)で永遠に開くことがある。

✔ Conditional にすることで:

  • 平均回帰の成功率が跳ね上がる
  • ドローダウンが浅くなる
  • トレンド相場での大敗を回避
  • ボラティリティ regime に適応
  • 不要なトレードが激減

これはプロップファームやクオンツファンドが
全ての裁定戦略に条件フィルターを付ける理由と一致する。


◆ ✔ 例:実際のConditionのセット(実戦向け)

コンディション例

✔ VIX or GVIX が一定以下
✔ ADX < 20(レンジ判定)
✔ スプレッドのHurst指数 < 0.5
✔ 欧州 or NY の流動性が高い時間帯
✔ 直近1時間で逆行したスプレッドが一定以上
✔ ハイインパクト指標前後では停止

これらを組み合わせると、
「勝てる場面だけで裁定を行う」
ようにできる。


◆ ✔ よくある誤解

Conditional Spread Arbitrage = 裁定の強化版
→ 誤り。
正しくは「裁定の適用範囲を絞って、成功率を最大化するロジック」


◆ ✔ 他の戦略との違い

戦略特徴
Spread Arbitrage(通常の裁定)スプレッドが歪めば即エントリー
Conditional Spread Arbitrage特定の条件下でのみ発動する、負けにくい裁定
Statistical Arbitrage統計モデルに基づく裁定。必ずしも条件付きではない
Pair Tradingスプレッドの平均回帰を狙うが、条件が弱いことが多い

Conditional はあらゆる裁定の中で
最も洗練されたプロ向けの手法

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