IS6FXの板圧力疑似読み(Pseudo-Orderbook Pressure)について

以下では、日本語で**「板圧力疑似読み(Pseudo-Orderbook Pressure)」**について、
板情報をフルで取得できない状況や、Tickだけしか見られない環境でも
**“板の圧力(買い/売りバイアス)を推定する技術”**として詳しく体系的に解説します。


目次

🔷 板圧力疑似読み(Pseudo-Orderbook Pressure)とは?

本来、板圧力(Orderbook Pressure)とは

  • 指値の厚さ
  • 指値の出入り(増減)
  • 成行の入り方
  • 板の不均衡(Imbalance)

などを基に 「どちら側に価格が動きやすいか」 を評価する手法です。

しかし、

  • APIで板情報(Level-2)が取れない
  • 取れるのは約定データ(Tick)だけ
  • 板が高速に変動し解析が追いつかない

といった制約がある場合、**「疑似的に板圧力を推定」**する必要が出てきます。

それが Pseudo-Orderbook Pressure です。


🔷 1. なぜ「疑似読み」が必要なのか?

板(LOB: Limit Order Book)は本来最も重要な情報源ですが、

❌ 情報量が多すぎて重い
❌ 配信が遅い(レイテンシ)
❌ APIでL2が取得できない
❌ 見た目より“フェイク板”が多い

などの理由で、「そのまま板を読む」より
Tick(約定データ)から板の意図を推定した方が実戦的なことが多いためです。

特にHFTでは、
**“板を見るより約定と更新スピードを見る”**が鉄則になりがちです。


🔷 2. 疑似板圧力の仕組み

疑似読みでは、板情報そのものではなく

  • Tick方向(買い成行 / 売り成行)
  • Tick間隔(更新速度)
  • 成行実行量(Volume Burst)
  • スプレッドの変化
  • 気配値の短期上下変動

などの**“結果として表れた動き”**から
「板がどう傾いているか」を逆算します。


🔷 3. 代表的な疑似板圧力モデル


🔸① 約定方向バイアス(Aggressive Order Ratio)

最もシンプルかつ強力。

Buy_ratio = 東側(Ask lift)約定量 / 全成行量
Sell_ratio = Bid hit約定量 / 全成行量

例:

  • Buy_ratio > 0.65 → 買い圧強い(上方向圧力)
  • Sell_ratio > 0.65 → 売り圧強い(下方向圧力)

これは板厚を直接見ていなくても、
“どちらが攻撃的であるか”を推し量れる。


🔸② Tick更新速度(Tick Speed Pressure)

Tickの方向+速度から圧力を推定。

Speed_up   = 上向きTickの発生頻度
Speed_down = 下向きTickの発生頻度
  • 上向きTickが連続&高速 → 上圧力
  • 下向きTickが連続&高速 → 下圧力

板厚が薄い側を成行が連続で食いに来ているサイン。


🔸③ スプレッド縮小/拡大の方向

スプレッドがどの側へ縮むかを見る。

  • Bid側へ寄る → 買い圧力
  • Ask側へ寄る → 売り圧力

成行注文がどちら側を押しているかが反映される。


🔸④ 気配値ジャンプ(Quote Jump)

板厚が薄い側は気配値が飛びやすい。

例:
Bidの数量が薄い → 売り成行が入る → Bid が下に飛ぶ

結果として、Quote Jump の方向が
**“板が壊れやすい側の圧力”**を示す。


🔸⑤ Volume Burst(瞬間約定量)

大口の成行が入ると、
板の薄い側が一気に抜かれる。

Volume Spike ≒ 板崩壊 → 圧力方向へ一気に走りやすい。


🔷 4. 疑似板圧力の組み合わせでの判定

多くのアルゴは複数の指標を組み合わせて
“総合的圧力”を算出します:


🔸総合スコア例(擬似)

Pressure = 
    0.4 * AggressiveOrderBias
  + 0.2 * TickSpeed
  + 0.2 * SpreadDirection
  + 0.2 * VolumeBurst

Pressure > 0.6 → 買い圧力強
Pressure < -0.6 → 売り圧力強

単純な板読みよりも、
“実際に約定した結果”を使うため
フェイク板(spoofing)に強い。


🔷 5. 具体的にどのような動きが板圧力につながるのか?


✔ 買い圧力の典型

  • Ask側成行が連続(Ask lift)
  • 上方向Tickが高速連続
  • 気配値が上に飛びやすい
  • スプレッドがBid側に寄る
  • 直近の成行量が買いに偏る

→ 上方向へ「引きずられる」ように価格が伸びる。


✔ 売り圧力の典型

  • Bid側成行が連続(Bid hit)
  • 下方向Tickが高速連続
  • 気配値が下に飛ぶ
  • スプレッドがAsk側に寄る
  • 成行量が売りに偏る

→ 下方向へ“滑り落ちるように”動く。


🔷 6. Pseudo-Orderbook Pressure の用途

疑似板圧力は以下で活躍します。


🔸① 超短期トレード(ミクロ順張り)

Tickバイアスとスピードから
1〜3秒の方向性を狙う。

Micro-Momentum Detection とも相性抜群。


🔸② 裁定戦略の“エントリー補完”

スプレッドが広がったタイミングで
どちら側の圧力が支配的かを判定して
エントリー方向を決める。


🔸③ リスク管理(板崩壊回避)

「急に圧力が偏った瞬間」を見て
板の薄い側へ価格が滑る前に逃げる。


🔸④ 約定改善(Execution Algo)

VWAPやTWAPアルゴで
圧力の強い側へ出す/弱い側を避けるなどに利用。


🔷 7. 弱点 / 注意点

  • 板の本当の厚みは見えないため過信禁物
  • 見せ玉(spoofing)に強いが、ニュース急変には弱い
  • ペアの非対称性(銘柄ごとの癖)に影響される
  • あくまで“確率的推定”

実際の板圧力と100%一致するわけではなく、
**「どちらに重みがあるかを推定する」**のが目的。

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