「合成商品 × カレンシーヘッジ × スプレッド最適化」 を、
実際の裁量〜システムトレードにすぐ落とし込める プロップ型の運用ロジックとして詳細に解説します。
このテーマは
- 合成金融商品(GeWorko / Synthetic Pair)
- クロス通貨構成の分解
- スプレッド・コスト最適化
- カレンシーヘッジ(通貨露出の消滅)
を組み合わせる “高度なアービトラージ構造” です。
■ 1. 戦略の本質(最重要ポイント)
「2つ以上の金融商品を合成して “価格変動だけ” を抽出し、
通貨リスクとスプレッドを最小化しながら、相関差による収益を取る」
つまり、
▶ 通貨要因(為替変動)=0
▶ スプレッド=最小化
▶ 残るのは“純粋な価格差(相関スプレッド)”
こうして 資産価格間の相対的ゆがみだけ を収益源にするのが戦略の狙いです。
■ 2. 戦略を構成する3つの要素
① 合成商品(Synthetic Asset / GeWorko)
2つ以上の資産を
A / B
A × 某通貨
A ÷ C + ヘッジ通貨調整
などの形で合成し、
新しい“合成チャート”を作る技術。
例:
- NAS100 ÷ USDJPY
- XAUUSD × USDJPY(=金の円建て合成チャート)
- EURUSD ÷ GBPUSD(=EURGBPの自作版)
合成チャートのメリット
- 市場に存在しないペアを作れる
- ボラやトレンド性を強調できる
- 裁定機会(ミスプライシング)が発生しやすい
② カレンシーヘッジ(Currency Hedge)
クロス通貨の “背後にある通貨露出” を消す技術。
例:
XAUUSD × USDJPY = XAJPY(円建て金)
これは
- 金価格の変動
- 為替の変動
を合成して1チャートにするが、
ヘッジを加えることでどちらかの影響を消すことが可能。
もっと高度な例:
(NAS100 ロング)+(USDJPY ショート比率調整)
→ “ナスダックの純粋な価格変動”のみ抽出
③ スプレッド最適化(Spread Optimization)
合成すると、
スプレッドが足し算/掛け算で増えるので、
最適な組み合わせ比率で 実質スプレッドを最小化する工程。
ポイント:
- 合成比率(ウェイト)を最適化してスプレッドを縮める
- ボラ比の調整で「動きは大きいのにスプレッドは小さい」状態を作れる
- 裁定ポジションも“低コストで持てる”
■ 3. 実際に使える「合成 × ヘッジ × スプレッド最適化」の3大パターン
■ パターン①
FXクロス通貨の“自作版”を作り、最小スプレッドで裁定
例:EURGBP を
EURUSD / GBPUSD
で合成する。
▼ メリット:
- スプレッドが安いペアで構成できる
(通常 EURGBP より EURUSD/GBPUSD の方が狭い) - 完全なカレンシーヘッジ
- EURUSDロング
- GBPUSDショート
を適切比率で持つと
→ USD 露出が消えて “純粋な EUR 対 GBP” が得られる。
- EURGBP と合成チャートの乖離を裁定できる
→ 相関スプレッド・アービトラージの土台。
■ パターン②
株価指数 × 通貨ヘッジ → “純指数商品”を自作する
例:NAS100 は USD建てなので
“為替ノイズ” を消す場合:
▼ 合成の典型式
NAS100 ロング
−(USDJPY ショート × β)
こうすると
- ナスダックの価格変動のみ
- USDJPYの変動をゼロ化
= 純粋な株価指数トレード が可能になる。
β(ヘッジ比率)は
- 価格ノイズ最小化
- ボラ最適化
- スプレッド最小化
を同時に満たす値に調整。
■ パターン③
金・原油などの商品を“通貨ヘッジ”して別商品化する
例:
XAUUSD(ドル建て金)を円建てに変換する:
XAUUSD × USDJPY = XAJPY(合成円建てゴールド)
さらに
- USDJPYのポジションを別に持ってヘッジ
- 金だけの値動きを抽出
- スプレッドを2つの商品の組み合わせで最適化
すると:
★ 通貨要因ゼロの“純金”チャート
★ 実スプレッド < 通常の金スプレッドにできる
(ヘッジ比率次第で縮小可能)
■ 4. 最重要:スプレッド最適化(Spread Optimization)の核心
合成すると通常スプレッドは増えるが、
ウェイト調整で“実質スプレッド”を最小化できる。
■ 基本式(シンプル版)
合成商品 S = A − βB の場合
実スプレッド = Spread(A) + |β| × Spread(B)
β を
- ボラ比(ATR比)
- 相関係数
- ポートフォリオ分散最小化条件
などで決めると
驚くほど低スプレッド化が可能。
例:
NAS100(スプ1.0)と USDJPY(スプ0.2)で
β = 0.15 とすると:
実スプレッド = 1.0 + 0.15×0.2 = 1.03
ほぼ 1.0と同じスプレッドでヘッジ完了。
■ 5. 戦略としての“勝ち筋”
① 相関スプレッドの乖離(ペアトレード)
→ 合成チャート vs 実チャートのギャップ
② ボラ差アービトラージ
→ ATR比率 × 合成比率で“片方が鈍い・片方が鋭い”瞬間を狙う
③ カレンシーヘッジで“通貨ノイズ”を除去
→ 実際の資産価格差だけに集中できる
④ スプレッド最適化で
→ 超低コスト運用 → 裁定が成立しやすい
■ 6. 実戦テンプレート(最も使われる型)
■ FX版
EURUSD ロング + GBPUSD ショート(比率調整)
→ “EURGBPの実質低スプレッド版”
■ 指数版
NAS100 ロング − USDJPY ショート × β
→ 為替ノイズを消した“純NASDAQ”
■ 商品版
XAUUSD × USDJPY
または
XAUUSD ロング + USDJPY ヘッジ
→ 通貨要因の消去 + スプ縮小
■ 7. どんなトレーダーに向く?
- 裁定/統計的アービトラージ系
- スキャルピング(固定スプと組み合わせると強い)
- ペアトレード
- 通貨リスクを持ちたくない投資家
- 指数の“純粋な動きの抽出”をしたい人
- 合成チャートでトレンドを強調させたい人
■ 8. まとめ
合成商品 × カレンシーヘッジ × スプレッド最適化 とは:
▶ 通貨リスクを完全に消し
▶ スプレッドを最小化し
▶ 資産間の相対価格差だけを抽出し
▶ その歪みを確実に利益化する戦略
つまりプロップ系の
相関アービトラージ の重要な基礎技術です。
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