IFC Marketsのボラティリティ調整レバレッジ(ATR × 比例戦略)について

以下では、**「ボラティリティ調整レバレッジ(ATR × 比例戦略)」**を
プロ向けのリスク管理の観点から、数式・実務フロー・応用例まで体系的に解説します。
(金融工学的にも正統なアプローチです)


目次

🔶 1. ボラティリティ調整レバレッジとは

市場の価格変動(ボラティリティ)に応じて、自動的にレバレッジとポジションサイズを変化させる手法

目的は:

  • 価格変動が激しい時 → ポジション縮小
  • 価格変動が小さい時 → ポジション拡大

これにより、

📌 リスクは一定、収益は最適化される
というトレードの黄金原則が実現できます。


🔶 2. ATR を使う理由

ATR(Average True Range)は、ガチのプロでも最も多用する「実ボラティリティ指標」。

ATR の特徴

  • 終値ベースの標準偏差よりも、ギャップ(窓開け)を反映
  • 現実のリスクに対してよりロバスト
  • 時間軸の応用が容易(14期間、20期間など)

🔶 3. 比例戦略(Proportional Strategy)とは

**「許容リスク量に比例してポジションサイズを決める」**という考え方。

式にすると:

ポジションサイズ = 資金 × 許容リスク率 / ATR

これにより、
✔ ATR が小さいとポジションが大きく
✔ ATR が大きいとポジションが小さく

調整される。


🔶 4. ATR × 比例戦略:完全な式

■ 目標リスク一定モデル

① まずは 1 トレードの許容リスク量:

R = 資金 × 許容リスク率

例:
資金100万円、リスク1% → R = 1万円

② ATR による値幅リスクの推定:

リスク値幅 = ATR

③ ポジションサイズ計算:

ポジション数量 = R / ATR

④ レバレッジ換算:

レバレッジ = (ポジション数量 × 現在価格) / 資金

🔶 5. 実際の数値例(BTC)

■ 仮定

  • 資金 100万円
  • BTC 価格 10,000 USDT
  • ATR(14) = 200 USDT
  • 許容リスク率 = 1%(R = 1万円 ≒ 67USDT)

■ ポジション数量

数量 = R / ATR = 67 / 200 = 0.335 BTC

■ レバレッジ

レバ = (0.335 × 10,000) / 100万円
     ≒ 3.35倍

📌 ボラティリティ低 → ATR小 → レバレッジ上昇
📌 ボラティリティ高 → ATR大 → レバレッジ低下


🔶 6. 「ATR × 比例戦略」が強い理由

✔ ① 黒字トレードで最適化(Kelly的発想)

最適レバレッジに自然と近づく。

✔ ② ドローダウンの悪化を防げる

暴落=ATR増大 → レバレッジ自動減少 → 被害抑制

✔ ③ どんな相場でも「一貫したリスク」を実現

1トレード1%という基準が常に守られる。


🔶 7. 実運用にするための拡張

■① スムージング(ATR の過剰反応を防止)

ATR_smoothed = EMA(ATR, n)

■② 最低レバ・最大レバの制限

1倍 ≤ レバレッジ ≤ 5倍

暴走防止。

■③ ボラティリティ・レジーム判定

  • ATR が平均の2倍超 → 「高ボラ期」
  • ATR が平均の0.5倍以下 → 「低ボラ期」

→ それぞれ別のレバ設定も可能。


🔶 8. ATR × 比例戦略 × クロス証拠金の相性

非常に良いです。

理由:

  • クロスは「口座全体リスク」で判断
  • ATR比例モデルは「個別ポジションのリスク」を一定化

→ 2つを組み合わせると、
口座全体のリスクがほぼ一定に保たれ、清算確率が大幅に低下
します。


🔶 9. Python風の実装例(ロジック)

capital = 1000000
risk_pct = 0.01
price = 10000
atr = 200

R = capital * risk_pct
qty = R / atr
leverage = (qty * price) / capital

print(qty, leverage)

🔶 10. まとめ(要点)

要点内容
目的ATRに応じてレバレッジを自動調整し、リスク一定化
メリットドローダウン抑制・破綻率低下・最適化された成績
コア式数量 = 資金 × リスク率 ÷ ATR
特徴高ボラ時はポジション縮小、低ボラ時は拡大

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