以下では、**相関ズラし型レバ二重運用(Cross-Margin Offset)**について、
“何を狙う手法なのか”、“どんなロジックでリスクを減らしながらレバを重ねるのか”、“メリット・デメリット”まで体系的にまとめて詳しく解説します。
🧩 相関ズラし型レバ二重運用(Cross-Margin Offset)とは?
相関の低い(または逆相関の)複数資産を組み合わせることで、
ポートフォリオ全体のリスクを相殺し、
その“相殺分”を使ってレバレッジを二重にかける運用手法です。
ポイントは、
「相関の低さ」= “隠れた余剰マージン(リスク枠)”
とみなし、それを活用して追加レバを乗せること。
単なる分散投資でもなく、単なるレバ投資でもなく、
「分散 → リスク低下 → その分をレバで取りに行く」という構造をとります。
🔍 なぜ“Cross-Margin”なのか?
相関が低い資産を同時保有すると:
- 一方が上がるとき、もう一方は必ずしも同方向に動かない
- 損失と利益が打ち消し合う
- → 全体の値動きが滑らかになる(=ボラティリティ低下)
すると、証拠金やリスク枠(VaR / マージン要求)が減り、
追加のポジションを積む余地(レバ枠)が生まれる。
これを“Cross-Margin Offset(相殺)”と呼ぶ。
📐 基本ロジック(シンプルモデル)
ポートフォリオ全体のボラティリティを:σp=w12σ12+w22σ22+2w1w2σ1σ2ρ
とする。
このとき、
- ρ(相関)が低いほど
- 全体の σp が小さくなる
- → レバレッジ上限を上げられる
そこで、目標ボラ σtarget に対して:レバレッジ倍率=σpσtarget
が決まる。
つまり、
相関が低ければ低いほど、レバが大きく乗る。
🧱 実際によく使われる組み合わせの例
◆ ① 株式 × 国債
もっとも典型的。
経済悪化 → 株下落 / 債券上昇(または低ボラ)
→ 相殺効果が強い
◆ ② 株式 × コモディティ(金)
金は株と低相関または逆相関になることが多い。
◆ ③ CTA系:トレンドフォロー × 逆張り
戦略同士の相関が低いため、戦略レベルでのCross-Margin。
◆ ④ 米国株 × 海外株(通貨ヘッジで相関調整)
地域分散による相関ズラし。
🧨 どこが“レバ二重”なのか?
通常のレバ戦略は「単一資産にレバ」。
しかしこの手法では:
- 分散効果でボラが低下
- 下がったボラに対してレバレッジを上乗せ
- **そのレバをさらに複数資産にかけるので、結果的に“レバ二重構造”**になる
例:
S&P500 単独では 1.5倍レバが限界
↓
株+債券で相関をズラすと
ポートフォリオボラが下がる
↓
→ 全体で 2.0倍レバに引き上げられる
この“相関ズラし → 余剰レバ枠 → 追加レバ”が二重構造。
✨ メリット
✓ 1. レバを上げてもリスクを抑えやすい
レバ戦略なのに、
ドローダウンが軽減されるケースが多い。
✓ 2. 分散の効果を最大限に活かせる
相関が低い資産同士を掛け合わせることで、
効率的フロンティアが外側に広がる。
✓ 3. 一般的な「単一資産×レバ」よりシャープレシオが上がりやすい
統計的にも、
多資産×レバ戦略の方が長期リスクが小さくなる傾向は強い。
⚠️ デメリット・注意点
✗ 1. 「相関の崩壊」に弱い
危機時には相関が1に近づき、
株×債券でも同時に下げることがある。
→ リスクが一気に跳ね上がる
✗ 2. レバ二重のため、相関崩壊+急変動で大きな損失
分散が効いている間は安全だが、崩れた瞬間は危険。
✗ 3. 取引コスト・管理の複雑さが増す
複数資産をレバで保つため、
リバランス頻度が増え、コストも増加。
🆚 他のレバレッジ調整手法との比較
| 手法名 | 目的 | レバ調整ルール | リスク特性 |
|---|---|---|---|
| VAL(ボラ連動) | ボラ一定化 | ボラ↑ レバ↓ | 低リスク |
| 追撃レバ反転法 | 反発狙い | ボラ↑ レバ↑ | 高リスク |
| 相関ズラし型レバ二重運用(今回) | 分散効果をレバ源泉に | 相関↓ → レバ↑ | 中〜高リスク(相関崩壊時は高リスク) |
このように、
相関を利用してリスクを下げ、余った枠でレバを上げる
という点が最大の特徴。
📚 まとめ
**相関ズラし型レバ二重運用(Cross-Margin Offset)**とは:
- 低相関資産を組み合わせて
- ポートフォリオリスクを相殺し
- “相殺で得た余剰リスク枠”にレバを追加
- 最終的にレバ二重構造で収益率を高める手法
長期では有効だが、
短期の相関崩壊(例:金融危機)時には非常に注意が必要。
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