「マルチエントリー・スケーリングイン戦略(トレンドフォローの分割構築)」は、
中・長期トレンドフォロー戦略の中でも最も実践的で、
リスクを抑えながらポジションを増やし、波に“段階的に乗る”手法です。
以下では、FXやCFDを中心に、理論・構造・実践手順・注意点まで詳しく解説します。
目次
🔹 1. 概要:スケーリングインとは?
「スケーリングイン(Scaling In)」とは、
トレンドが進むにつれてポジションを分割して追加していく手法のことです。
簡単に言うと👇
「最初からフルポジションを建てるのではなく、
トレンドが確認されるたびに少しずつ乗せていく」
という考え方です。
🔹 2. 戦略の目的と特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 戦略名 | マルチエントリー・スケーリングイン戦略 |
| タイプ | トレンドフォロー(順張り) |
| 対象期間 | 数時間〜数週間(スイングまたは中期) |
| 主な目的 | トレンド方向への確信が高まるごとにポジションを増やし、利益を“積み上げ式”に最大化する。 |
| コア思想 | 「リスク最小化 × 利益最大化」=“階段式トレンド追随” |
🔹 3. 基本ロジックの流れ
✅ ステップ①:初期ポジション(先行エントリー)
- トレンド発生の初期兆候で小ロットから入る。
- 例:移動平均クロスやブレイクアウト初動など。
- この段階では**「当たれば利益、外れれば小損」**を意識。
✅ ステップ②:確信の高まりで追加エントリー
- トレンド継続が確認されるたびに追加ポジション。
- 例:押し目買い、戻り売りで「階段状」に積み上げる。
- 損益がプラスの状態で追加 → 含み益を使ってリスクを中和。
✅ ステップ③:ポジションの統合管理
- 各ポジションの平均建値・含み損益を把握。
- トレーリングストップなどで全体リスクを管理。
- 最後はトレンドの失速サインで一括決済または部分利確。
🔹 4. 図解イメージ(テキスト表現)
上昇トレンドのイメージ:
エントリー①:トレンド初動で 1ロット
エントリー②:押し目買いで +1ロット
エントリー③:高値更新後に +1ロット
↑
価格上昇ごとに“階段的に”追加
↓
→ 全体で3ロットの上昇ポジション
このように、ポジションを「一度に建てない」ことで、
方向が外れた場合の損失を最小化できます。
🔹 5. 具体的な構築例(USD/JPY上昇トレンド)
| ステップ | エントリー価格 | ロット | 建値平均 | 合計ロット | 状況 |
|---|---|---|---|---|---|
| ① 初動 | 150.00 | 1 | 150.00 | 1 | 初期ポジション |
| ② 押し目買い | 150.30 | 1 | 150.15 | 2 | 確信上昇中 |
| ③ 高値更新 | 150.80 | 1 | 150.37 | 3 | トレンド継続中 |
| ④ 部分利確 | 151.40 | −1 | 150.37 | 2 | リスク縮小 |
| ⑤ トレーリング決済 | 151.80 | −2 | — | 0 | トレンド終了 |
→ 結果として「全体平均建値 150.37 → 決済平均 151.60」で
**+123pips(3段階利益積み上げ)**を実現。
🔹 6. スケーリングインのルール設計
💡 ルール①:追加条件を明確化
- EMA20/50の乖離確認(トレンド強度)
- 押し目または戻りの38.2〜50%(フィボナッチ)
- 出来高増加・順方向ローソク確定
💡 ルール②:ロットサイズの制御
- 例:1:0.8:0.5 のように段階的に縮小(慎重追加)
- または「含み益×1/3」を次のロット分の証拠金として再投資。
💡 ルール③:損切りと全体管理
- 各ポジションごとに個別SL設定(建値近く)
- 全体損益がマイナスに転じたら一括撤退
- 方向が明確に反転した場合は逆スケーリングアウト(分割解消)
🔹 7. メリットとデメリット
✅ メリット
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| リスク限定 | 初動で小ロットのため外れても損失小 |
| 資金効率 | 含み益を活用して安全に追加可能 |
| トレンド順応 | 押し目・戻りごとに最適化された建値構築 |
| 利益拡張性 | トレンドが伸びるほど利益が“指数的”に増える |
⚠️ デメリット
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手動管理が煩雑 | 追加・管理の判断が頻繁に必要 |
| 誤追加リスク | 押し目ではなく転換点に入ると損失拡大 |
| トレンド終了見極め | 遅れると利益を吐き出す |
| 過度な積み上げ | レバレッジ過多による証拠金圧迫リスク |
🔹 8. テクニカル組み合わせ例
| 目的 | 指標 | 利用方法 |
|---|---|---|
| トレンド判定 | EMA20・EMA50 | ゴールデンクロス後の押し目で追加 |
| 強度確認 | ADX・RSI | ADX>25, RSI>55で順行追加 |
| 押し目判断 | フィボナッチリトレースメント | 38.2〜50%押しで追加 |
| 決済判断 | トレーリングストップ / SAR | トレンド終了サインで分割利確 |
🔹 9. スケーリングインの応用パターン
🧩 A. 時間分割型
- 時間経過ごとに追加(例:毎日終値で1ロットずつ)
→ トレンド持続性を時間軸で確認しながら追加。
🧩 B. ボラティリティ分割型
- ATR値が一定幅拡大するたびに追加。
→ ボラ上昇=トレンド加速とみなして乗せる。
🧩 C. ピラミッディング(Pyramiding)
- 含み益を利用して段階的にロット増加。
→ 含み益の○%分を次のポジション資金に充当。
🔹 10. まとめ
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | マルチエントリー・スケーリングイン戦略 |
| コア思想 | トレンドを確認しながら“安全に積み上げる” |
| タイプ | 順張り・段階構築型 |
| メリット | リスク限定・利益最大化・柔軟性 |
| デメリット | 管理負担・見極め難易度 |
| 最適対象 | 中〜長期トレンド市場(FX・指数・コモディティ) |

