AXIORYのボラティリティスキャルピング/レンジブレイク並列型

ボラティリティ・スカルピング/レンジブレイク並列型(Volatility Scalping / Range-Break Parallel Model)」は、
短期ボラティリティの拡縮と、レンジブレイクアウトの構造を同時に監視・利用する戦略です。
これは、いわば「静→動の変化点をリアルタイムで捕らえるハイブリッド型」戦略で、
HFT系や裁量トレーダーの中でも「変化率トレード」の核心に位置します。

以下で、構造・理論・実装・リスク管理までを体系的に解説します。


目次

🧩 ① 概要:戦略の基本思想

この戦略は、2つの異なる性質の戦略を並列的(同時進行的)に運用します。

コンポーネント内容狙い
① ボラティリティ・スキャルピング短期的なボラ変動(拡縮)から小利益を頻繁に取る「微小ボラ」→「ノイズ吸収型収益」
② レンジブレイク・モジュールレンジを抜けた際の方向性+ボラ急拡大を狙う「静的構造→動的加速」局面を収益化

両者を同時に稼働させることで、

  • レンジ内ではスカルピングで稼ぎ、
  • レンジブレイク時にはそのエネルギーを捕らえて爆発的に伸ばす、
    という“ボラティリティ二相モデル”を構築します。

⚙️ ② 構成イメージ(全体アーキテクチャ)

   ┌──────────────────────┐
   │   ボラティリティ・スカルピング層  │ ← ノイズ帯域を利用
   │   (ATR/σレンジ内反転)             │
   └──────┬────────────────┘
           │ リアルタイム監視
           ▼
   ┌──────────────────────┐
   │   レンジブレイク層(拡散モード)   │ ← ブレイク発火点を検出
   │   (Donchian / ボリンジャーバンド) │
   └──────────────────────┘

2つの層が独立にシグナルを生成しますが、
「ボラティリティの変化率(Δσ)」を共有して連動動作します。


📊 ③ フェーズ構造(市場状態の切替)

市場は大きく以下の3フェーズを繰り返します:

フェーズ状態戦略稼働モード
Phase 1ボラ低下期(収縮)スカルピングのみ有効(小反転を取る)
Phase 2レンジ形成(低ボラ安定)スカルピング継続・ブレイク監視
Phase 3ボラ拡大(拡散)レンジブレイク発動 → トレンド追随

→ ボラティリティの状態遷移(σ縮小 → σ拡大)を軸に戦略が切り替わる。


🧮 ④ 数理的バックボーン

(1)ボラティリティの位相モデル

価格の変動率(σ)を時間で追跡し、その変化率(Δσ/Δt)で相場の「静→動」変化を特定します。 σt=1N∑i=1N(ri−rˉ)2\sigma_t = \sqrt{\frac{1}{N} \sum_{i=1}^{N} (r_i – \bar{r})^2}σt​=N1​i=1∑N​(ri​−rˉ)2​ Δσ=σt−σt−1\Delta \sigma = \sigma_t – \sigma_{t-1}Δσ=σt​−σt−1​

  • Δσ<0\Delta\sigma < 0Δσ<0:ボラ縮小 → スカルピング優位
  • Δσ>0\Delta\sigma > 0Δσ>0:ボラ拡大 → ブレイク狙い優位

この「Δσの符号変化点」が、フェーズ転換トリガーになります。


(2)スキャルピング部(ノイズ帯域内での反転)

ロジック例:

  • ATR(14)×0.5以内の変動を「ノイズ帯域」とみなし、
    その中でRSIや短期EMA反転をトリガーにエントリー。
  • 成行ではなくリミットオーダー+タイトストップで実行。
  • 利益目標:0.5〜1.0×ATR程度。

目的:
「方向ではなく波動(ボラ)の小刻みな反射」を取る。


(3)レンジブレイク部(エネルギー放出局面)

ロジック例:

  • Donchian Channel上限/下限を突破(ブレイク)
  • 同時に ATR / ATR(50) > 1.3(=短期ボラ拡大)
  • 出来高が直近平均の1.5倍以上
    ブレイク確定

その瞬間、スカルピングモジュールを停止し、
ブレイクモードへ切替(ロング/ショート方向に乗る)。


🧠 ⑤ 並列制御ロジック(アルゴ的構造)

擬似コード的には以下のような形になります。

if delta_sigma < 0:
    # ボラ縮小中:スカルピング動作
    scalp_trade()
else:
    # ボラ拡大中:レンジブレイク検出
    if price > upper_channel or price < lower_channel:
        breakout_trade()

さらに、ブレイク成立時にはボラティリティ比を監視して、

  • 拡大局面(Δσ上昇持続) → トレーリング保持
  • 減衰局面(Δσ低下) → 部分利確

といったボラ依存ストップ制御を行います。


📈 ⑥ 戦略のシナジー構造(並列性の利点)

項目ボラ・スキャルピングレンジ・ブレイク
稼働相場低ボラ・横ばい高ボラ・方向性発生
トリガーΔσ < 0Δσ > 0
リスクリワード小RR(1:1〜1.5)高RR(1:3〜1:5)
平均滞在時間数分〜数十分数時間〜半日
目的微利の積み重ね大波の捕捉

→ 並列運用によって「どんな市場環境でも」稼働できる安定型モデルになる。


📉 ⑦ リスク管理とダイナミック制御

リスク要因対応策
偽ブレイク出来高+ATR比で確認後に確定エントリー
高頻度ノイズΔσ閾値を設け、軽微なボラ変動を無視
過剰トレード並列モジュールの同時ポジション制限
スリッページ指値スカルピング+IFDブレイク制御

また、バックテスト段階では「ボラ変化率フィルタ」の閾値(Δσ > α)を最適化することで、
市場特性に合わせた切替精度を上げます。


🧭 ⑧ 実践的シナリオ(BTCなどでの運用例)

  1. BTC/USD 15分足でATRが低下中(ボラ収縮期)
     → スカルピングモード稼働(レンジ上下で小反転)
  2. ボラ上昇開始+出来高急増+上限ブレイク
     → スカルピング停止、ブレイクモードへ自動切替
  3. ATR/ATR(50)=1.8 → トレンド追随保持
  4. ATRが減速(拡大鈍化) → 部分利確&トレーリングストップ発動

このように「ボラ構造の状態変化」を中心に、モードを自動で切り替えます。


✅ ⑨ まとめ

要素内容
戦略名ボラティリティ・スキャルピング/レンジブレイク並列型
コア概念ボラ変化率(Δσ)で戦略モードを切替
構成スカルピング層+ブレイク層(並列稼働)
主な使用指標ATR・Donchian・出来高・RSI・ボリンジャーバンド
特徴静的相場では細かく稼ぎ、動的相場では一気に取る
適用市場FX・先物・仮想通貨(特にBTC, NASDAQ系で有効)
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