XMのハーモニックパターン自動認識+逆張り戦略

FXのハーモニックパターン(Harmonic Patterns)を“自動認識”して、完成点D(PRZ)で“逆張り(リバーサル)”を狙う戦略」を、実務で回せる形まで落とし込んだ解説です(約1.5万字級の密度)。
※投資助言ではありません。ハーモニックは“当たると綺麗に反転する”一方で、外れると普通に突き抜けるので、ルール化と損切り設計が全てです。TradingViewの自動検出系スクリプトも「確率的で失敗する」点を明記しています。


目次

1) ハーモニックパターンの本質:逆張りではなく「PRZ(反転候補帯)」狙い

ハーモニックは、X-A-B-C-D の5点構造(AB=CDは4点)で、各脚の比率がフィボナッチに整合することで
**D付近に“反転しやすい価格帯=PRZ(Potential Reversal Zone)”**を定義し、そこで逆張りを仕掛ける考え方です。

重要なのはここ:

  • 「パターンが出た=反転確定」ではない
  • 「Dは点ではなく帯(ゾーン)」
  • “ゾーンに到達したあと”に、止まった証拠が出るかどうかが勝率を左右する

2) 主要パターン(逆張りに使う “定番だけ” まず押さえる)

全部覚えるとカオスになるので、最初は AB=CD / Gartley / Bat / Butterfly / Crab の5つで十分です。
(TradingViewの自動検出でも、この辺りは基本ラインとして扱われがちです。)

2-1) Gartley(ガートレー)— “順張り寄り”の反転(押し目・戻り目として強い)

代表的な比率の目安(流派で多少幅あり):

  • AB:XAの 0.618 押し
  • BC:ABの 0.382~0.886
  • CD:BCの 1.13~1.618
  • D:XAの 0.786 付近(ここが象徴)

Gartleyは「大きなトレンドの中の調整波(押し目)」として出やすく、
逆張りと言っても上位足トレンドに沿う形になりやすいのが長所。

2-2) Bat(バット)— Dが深め(0.886が目玉)

Batは D が XA の 0.886 近辺に来やすい、というのが特徴としてよく説明されます(文献・解説で一般的に言及される“バットの核”)。
押しが深いぶん、Dの反転が綺麗に決まる日もありますが、外れると“深い押しがそのまま崩れ”に繋がりやすいので、損切りは必須。

2-3) Butterfly(バタフライ)— Xを超えて“行き過ぎ”を拾う

バタフライは「DがXを超える(オーバーシュート)」のが特徴で、

AB:XAの 0.786

BC:ABの 0.382~0.886

CD:ABの 1.618~2.618 または XAの 1.27~1.618 といった目安がよく挙げられます。

“行き過ぎ”を拾うので、逆張りっぽさが強い反面、トレンド転換点の取り合いになって難易度は上がります。

2-4) Crab(クラブ)— 最も深い“延長”を拾う(突っ込み逆張り)

クラブは D が XA の 1.618延長など「かなり深い」到達を狙う系として説明されます。
“深い=刺されやすい”ので、ハイレバと相性最悪。逆に、低レバ+明確な損切りで淡々とやるなら武器にもなります。

2-5) AB=CD(4点)— 一番使いやすい(単体でも、他パターンの中にも内包される)

ABとCDの値幅が等しい(またはフィボ比で揃う)という単純さが強み。
複雑パターンの中にも内包されるので、**自動検出の「補助条件」**としても使いやすいです。


3) 「自動認識」の現実:ハーモニック=ZigZag(ピボット抽出)問題

ハーモニックを機械的に見つけるには、まず **スイング高値/安値(ピボット)**を決めないといけません。
ここで定番が ZigZag / pivot関数です。ZigZagは連続する高値・安値の“山谷”を繋いで構造を見やすくする指標として説明されています。

TradingViewのハーモニック自動検出系スクリプトも、ピボット検出(左・右バー数など)で構造点を作る方式を明言しています。

3-1) 自動検出の基本フロー(超重要)

  1. ピボット抽出(ZigZag / pivot)
  2. 直近の5点(X,A,B,C,D候補)をスライドしながら取る
  3. 各脚の比率(AB/XA、BC/AB、CD/BC、AD/XA…)を計算
  4. 各パターンの許容範囲に入っていれば「候補」
  5. Dは“帯(PRZ)”として出し、到達後の反転確認でエントリー

3-2) 最大の落とし穴:ZigZagは“リペイント”しやすい

ZigZagは「後から高値/安値が更新されると、直近の山谷が入れ替わる」ので、リアルタイムで見ているとパターンが消える/変形することがよく起きます。

対策は2択:

  • 確定ピボットのみ採用(右側バー数が揃って確定するまで待つ)
    → シグナルは遅れるが、検証と実運用が一致しやすい
  • 未確定も使うが、シグナルの品質スコアを下げる
    → 早いがだましが増える

TradingViewのスクリプト説明でも「Pivot Right Bars(右側確認)」のような“確定遅延”がパラメータとして語られます。


4) “自動認識”のパラメータ設計:ここで勝率が激変する

自動化で最初に詰むのが「何でもパターンに見える」問題です。
それを防ぐために、最低限この3つを設計します。

4-1) ピボット感度(Depth / Left-Right bars / Deviation)

  • 感度が高すぎる:小さな揺れまで拾ってパターン乱発 → 期待値が薄い
  • 感度が低すぎる:パターンがほとんど出ない → 機会損失

現実的には、

  • スイング(H4/H1)なら感度低め
  • デイトレ(H1/M15)なら中
  • スキャ(M5/M1)はノイズ地獄なので非推奨(やるなら強いフィルタ必須)

4-2) 最小スイング距離(Min Swing Distance)

TradingView系の説明でも「小さなスイングを無視してノイズを減らす」趣旨が述べられます。
これを入れるだけで、**“ミニパターンの乱発”**が激減します。

4-3) 比率の許容誤差(Ratio tolerance)

ハーモニックは“数学っぽい”ですが、実戦では完全一致しません。
だから許容誤差が必要。ただし広げすぎると別物になります。

  • 初心者の目安:±3%~±8%程度から試す
  • スプレッドが大きい通貨や荒い時間帯ほど、誤差はやや広めに必要
  • ただし「広げれば勝てる」ではなく「広げるとパターンの質が落ちる」

5) 逆張り戦略の核:D(PRZ)で“刺さる”のを待つな、“止まる”のを待て

ハーモニック逆張りで一番多い負けはこれです。

PRZ到達=即逆張り → そのまま貫通して損切り

PRZは反転候補帯であって、反転命令ではない
なので戦略は必ず「PRZでの反転確認」を組み込みます。

TradingViewのハーモニック解説・自動検出でも、確率的で失敗し得るため確認やリスク管理が必要、という注意が入ります。


6) 実戦テンプレ:ハーモニック自動認識+逆張り(2段階エントリー)

ここから“使える形”にします。
(買いパターン=bullish想定。売りは逆。)

6-1) ステップ0:上位足フィルタ(やらない相場を増やす)

逆張りの死亡率を下げるには、上位足で相場環境を絞るのが最強です。

  • A案:トレンド順行型(おすすめ)
    上位足が上昇トレンドのときだけ「Bullish Gartley/Bat」を狙う
    → “押し目買い”になりやすく、逆張りの事故が減る
  • B案:純逆張り型
    上位足が過熱(大乖離)・大きな抵抗に当たっているときだけ狙う
    → 当たれば大きいが、外れると致命傷

最初はA案が生存率高いです。

6-2) ステップ1:パターン検出(候補)

自動認識が出したパターン候補に対し、スコアリングします(後述)。

  • パターン:Gartley/Bat/Butterfly/Crab/AB=CD
  • D(PRZ):複数フィボが重なる帯(できるだけ“合流”が多いほど良い)

比率の目安は一般的な解説に従いつつ、許容誤差を設定します。例えばGartleyの比率目安やD=0.786近辺などの説明は広く共有されています。
Butterflyの比率目安も同様に複数資料で語られます。

6-3) ステップ2:PRZ到達後の“反転トリガー”で入る(超重要)

逆張りの入口は2種類。

入口①:ローソク足トリガー(簡単で強い)

PRZ到達後に、下位足(例:M15やM5)で

  • 長い下ヒゲ(拒否)
  • 包み足(エンゴルフィン)
  • W底っぽい2回試し
    など、“売りが止まった”サインで入る。

入口②:構造トリガー(再現性が高い)

PRZ到達後に、下位足で

  • 直近の戻り高値(LH)を上抜け
  • 小さな下降トレンドが崩れた
    のを確認して入る。

“止まった証拠”を待つので、エントリーは遅れますが、貫通死が減ります。


7) 損切り設計:ハーモニック逆張りは「Xの外」か「PRZ外」で統一

損切りは曖昧にすると崩壊します。代表は2つ。

7-1) 保守:Xの外(パターン否定)

  • Bullishなら、Dが下に抜けてXも割るなら「そもそもパターン否定」
  • 損切りが広くなる欠点はあるが、理屈は綺麗

7-2) 攻め:PRZの外(短期向け)

  • PRZ帯を明確に抜けたら撤退
  • 損切りは小さくできるが、ダマシで刈られやすい

初心者は「保守(X外)」で検証し、耐えられないなら時間足を上げるかロットを落とす方が健全です。


8) 利確設計:ハーモニックは“戻り”を取る戦略。欲張りすぎが敵

よく使われる利確は「段階利確」です。

  • TP1:CDの 38.2% 戻し(小さく確定)
  • TP2:CDの 61.8% 戻し
  • TP3:B点付近(強い戻りなら)
  • 残り:トレーリング(下位足の押し安値更新でストップを上げる)

「全部Bまで!」は、途中で反転して利益を吐きやすいので、逆張りは分割が相性良いです。


9) 自動認識×逆張りの“勝率を上げる”スコアリング(実務の肝)

自動検出は候補を大量に出します。そこで採用/見送りを機械的に決めるための点数表を作ります。

9-1) スコア例(100点満点のイメージ)

(A) 比率の整合性(最大40点)

  • 各比率が理想値に近いほど高得点
  • 誤差が大きいほど減点

(B) PRZのコンフルエンス(最大25点)

  • D付近に
    • XAの主要リトレース(0.786や0.886等)
    • BCの延長(1.27/1.618等)
    • AB=CDの到達
      が重なるほど高得点(“合流”が多いほど反転候補として強い)

(C) 上位足の位置(最大20点)

  • 上位足の支持抵抗(前日高安・週足ライン・キリ番)と重なる → 加点
  • 上位足トレンドに逆らいすぎ → 減点

(D) 到達の仕方(最大15点)

  • PRZに向かって加速しすぎ(大陰線連打)→ 反転しづらいので減点
  • 減速・ヒゲ・もみ合いを伴って到達 → 加点

合格ライン(例):70点以上だけエントリー、など。


10) 自動化の実装パターン:TradingView / MT4/MT5 / Python の3ルート

ここは“どう作るか”の現実論です(規約回避や不正な抜け道ではなく、普通の検出の話)。

10-1) TradingView(最も手軽)

TradingViewにはハーモニック自動検出スクリプトが複数あり、
ピボット検出やスイング距離フィルタ等をパラメータで調整する説明も見られます。
最近は「non-repainting(非リペイント)」を強調するスクリプトもありますが、何をもって非リペイントと言っているかは要注意です(多くは“確定後は書き換えない”という意味)。

運用の現実解:

  • アラート → 手動確認 → 発注(半自動)
    が一番事故りにくいです。

10-2) MT4/MT5

EA化する場合も、基本は

  • ZigZagでピボット抽出
  • 比率判定
  • PRZ到達後のトリガー確認
    という構造になります。

注意点:MT4/5のZigZagもリペイント性が強いので、
「確定バーのみ」参照にしないとバックテストと実運用が乖離しやすい。

10-3) Python(研究・検証に強い)

Pythonで過去データを掃いて、

  • どの通貨ペア
  • どの時間足
  • どのパターン
    が本当に機能しているかを統計的に見られます。

実運用に直結させるより、まずは
“自分の環境で期待値があるか”の検証に使うのがおすすめ。


11) よくある事故と、対策(ここ超重要)

事故①:パターン乱発 → どれでも入って負ける

対策:Min swing distance、スコアリング、上位足フィルタ。

事故②:PRZ即エントリー → 貫通死

対策:PRZ後の反転トリガー必須(足形 or 構造)。

事故③:指標・要人発言で粉砕

対策:重要イベント前後は“パターン完成してもノートレ”ルール。

事故④:バックテストでは勝つのにリアルで負ける

原因の多くは、

  • リペイント(未確定ピボット使用)
  • スプレッド/滑り未反映
  • シグナルの先読み(未来の足を使っていた)
    です。

対策

  • “確定ピボットのみ”で検証
  • 取引コスト込み
  • シグナル時点で利用可能な情報だけで判定

12) すぐ使える「逆張りテンプレ」2つ(初心者→中級)

最後に、実務テンプレを置きます。売りは反転してください。

テンプレA:安全寄り(トレンド順行の“押し目として”使う)

  • 上位足(H4/D1)で上昇トレンド
  • Bullish Gartley/Bat だけ採用(逆張りの中でも事故が少なめ)
  • PRZ到達後、M15で構造転換(LH上抜け)でエントリー
  • SL:Xの外
  • TP:CD 38.2%で半分、61.8%で残りの半分、残りはトレーリング

参照:Gartleyの比率目安(AB=0.618、Dが0.786付近など)

テンプレB:攻め寄り(行き過ぎを拾う:Butterfly/Crab)

  • 上位足が抵抗帯に到達(週足レベルや明確な高値圏)
  • Butterfly/Crabを採用(スコア80点以上など厳しめ)
  • PRZ到達後、M5で拒否足+小レンジ上抜けで入る
  • SL:PRZ外(浅め)+時間損切り(例:30分反転しないなら撤退)
  • TP:CD 38.2%→61.8%→B付近(伸びれば)

参照:Butterflyの代表比率(AB=0.786、CDの延長目安など)


13) まとめ:ハーモニック自動認識×逆張りは「検出」より「採用基準」と「止まった証拠」

  • 自動認識の正体は ピボット抽出(ZigZag/pivot)+比率判定で、リペイントとノイズが最大の敵
  • ハーモニックは確率的で失敗するので、PRZ到達後の反転確認とリスク管理が必須
  • 勝率を上げるコツは
    1. 上位足フィルタ(順行型が安定)
    2. スコアリング(比率・合流・位置・到達の仕方)
    3. トリガー待ち(足形or構造)
    4. 損切りの統一(X外 or PRZ外)
    5. 段階利確(CD戻りで取る)

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