以下では、価格加速(Momentum Burst)× スプレッド剥ぎ取りという手法を、クオンツ・裁量トレード両面から体系的に詳しく解説します。
この組み合わせは、いわゆる “マイクロモメンタム狩り”+“ペア/裁定スプレッド回収” を融合した戦略です。
🔥 1. 価格加速(Momentum Burst)とは?
**Momentum Burst(モメンタム・バースト)**は:
価格が急激に加速する短時間の上昇・下落(Burst)を捉えるテクニック
で、一般的なモメンタム(Trend Following)より
“時間的スケールが極端に短い”のが特徴です。
特徴
- 数秒〜数分で発生する急伸・急落
- 大口の連鎖注文・ストップ狩り・板薄によるスリップが原因
- その後は 急激に反転(リバ)する場合 と
そのままトレンド化 する場合がある
⚡ 2. スプレッド剥ぎ取り(Spread Capture / Spread Arbitrage)とは?
スプレッド剥ぎ取りとは:
2つ以上の価格(銘柄・先物・現物・板気配など)の乖離を利用して
機械的にスプレッドを回収する戦略
で、主に:
- ペアトレード(価格差)
- 板のスプレッド剥ぎ取り(Best Bid/Ask)
- 先物–現物スプレッド
- ETF–原資産スプレッド
- 複数取引所間のアービトラージ(Crypto系で多い)
などの形を取ります。
🎯 3. 両者を組み合わせた戦略の本質
Momentum Burst × Spread 剥ぎ取り の肝は:
価格の急加速が起こる瞬間、
スプレッドが“一時的に異常拡大”する性質を利用する
という点です。
Momentum Burst は大口注文によって板が“掃き上げ/掃き下げ”されるため、
通常のスプレッド構造が崩れます。
例:
- 先物だけ急伸し、現物が追いついていない
- A取引所だけ瞬間的に価格が飛び、B取引所が遅れる
- ETF が暴走して原資産に対してプレミアが大きく開く
➡️ この「瞬間の歪み」を剥ぎ取るのが戦略の中心思想
🧠 4. 具体的な戦略フロー(最も実務的)
STEP 1:価格加速(Burst)を検出する
典型的には以下の指標が使われます:
- 超短期 RSI(例:RSI(2)、RSI(1))
- 瞬間モメンタム(Δ price / Δ time)
- 連続ティック方向数(tick streak)
- VWAP からの乖離(intraday burst)
- 板の気配バランス(bid/ask imbalance)
- 成行の連打(Market Order Pressure)
例えば:
直近200msで +0.1% の急伸 → Burst 解析トリガー
など。
STEP 2:Burst によって“歪むスプレッド”を検知
代表例:
① 先物 vs 現物の乖離
価格加速時、先物だけ急伸/急落しやすい。
先物が 0.3% 先行 → 現物が遅れている
→ スプレッドを売りに行く(剥ぎ取る)
② 複数取引所間の価格乖離(Crypto で多い)
Burst は板が薄い取引所から先に発生するので、
A取引所:急伸
B取引所:遅れて反応
→ A で売り / B で買い
③ ETF – 原資産スプレッド
ETF は流動性が乏しい場合、Burst の影響で過剰に動きやすい。
STEP 3:スプレッドを剥ぎ取る(ポジション構築)
📌 基本形
Burst で飛んでいる側を 逆張りで叩き、
遅れている側を 順張りで拾う。
例(先物が急伸):
- 先物:売り(加速後の過熱を叩く)
- 現物:買い(遅れ反応を拾う)
=> スプレッドは短時間で収束しやすい
STEP 4:収束後にクローズ
スプレッドが平均に戻ったらすぐクローズ。
トレード時間は:
- 数秒〜数十秒(高頻度)
- 長くても数分
📈 5. なぜ機能するのか(メカニズム)
✔ 価格加速は “歪みを生む”
市場が急激に動くと、
先に反応する市場と遅れる市場が出るため、
一時的な乖離(arb チャンス)が必ず発生する。
✔ 歪みは短時間で修正される(再結合)
裁定取引が強力に働くため:
歪みが出る → 裁定勢が飛び込む → すぐ収束
⚠ 6. リスク・注意点
❗ イベントバースト(指標発表)は逆に危険
Burst 後の“再結合”が起きない場合がある。
❗ 板が薄いと逆に踏まれる
特に Crypto の小規模取引所は注意。
❗ レイテンシーが極めて重要
機関投資家は 1ms 単位で arb を狙うため、
遅延が大きいと不利。
🧪 7. 応用:ロング・ショートでの Burst Capture
Momentum Burst を “逆張り”で取るのではなく、
Burst → まだ加速しきっていない銘柄(遅行銘柄)を順張りで買う
という応用もある。
📌 まとめ
Momentum Burst × Spread 剥ぎ取り =
価格加速の瞬間に生まれる「一時的な価格乖離」を
高速で回収する統計裁定(Stat Arb)戦略
目的:
- Burst が生む“異常スプレッド”を捕まえる
- 直後の収束で利ざやを得る
技術的ポイント:
- Burst 検出ロジックが命
- スプレッドの定義と収束判断
- レイテンシーと執行性能
- 板の厚さと約定リスク管理


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