JadeFOREXの流動性シャドウ・スプレッド戦略(Liquidity Shadow Spread)

以下では 流動性シャドウ・スプレッド戦略(Liquidity Shadow Spread Strategy) を、
JadeFOREX・マイクロ構造理論・流動性工学の観点から
高度トレーダー向けに完全解説 します。


目次

■ 1. Liquidity Shadow Spread とは?

一言でまとめると:

実際のスプレッドの背後に存在する
“見えない(シャドウ)流動性” を推計し、
将来のスプレッド変動を先読みしてトレードする戦略。

この“シャドウ”とは何か?

✔ 表示されていない流動性

(LPが板に出していないクオート)

✔ 約定後に現れる潜在流動性

(隠れた注文)

✔ オーダーブックの反応速度

(LPが反応するまでの遅延)

✔ LPの在庫調整意図

(表示スプレッドとは別の本音)

つまり「今見えているスプレッドだけで判断しては遅い」
という前提に基づき、

真の・潜在的な “実効スプレッド” をリアルタイムに推計する
→ その差(Shadow)をトレードに利用する

という極めてマイクロ構造的な戦略です。

HFT・クオンツFXが使う領域。


■ 2. なぜ “Shadow(影)” が重要なのか?

表示されているスプレッド(Visible Spread)は
LPの“意図”をすべて反映しているわけではありません。

むしろ LP は:

  • リスク回避局面 → 表示は狭く保ちつつ、実際はクオート控えめ
  • 大口注文接近 → 表示スプレッドを急に広げる前にバックエンドで準備
  • 高ボラ → 表示スプレッドが遅れて反応

がよくあり、実際の流動性は 表示値より早く動く のが普通。

→ このギャップこそが シャドウ・スプレッド


■ 3. シャドウ・スプレッドの基本式

可観測なスプレッドを StS_tSt​
シャドウ(潜在)スプレッドを StshadowS^{shadow}_tStshadow​ とすると、Stshadow=f(deptht,decayt,responset,inventoryt)S^{shadow}_t = f(depth_t, decay_t, response_t, inventory_t)Stshadow​=f(deptht​,decayt​,responset​,inventoryt​)

例として:Stshadow=St+α1Dt1+α2Rt+α3ItS^{shadow}_t = S_t + \alpha_1 D^{-1}_t + \alpha_2 R_t + \alpha_3 I_tStshadow​=St​+α1​Dt−1​+α2​Rt​+α3​It​

  • Dt1D^{-1}_tDt−1​ = depthの逆数(流動性が薄いほどシャドウスプレッドは広い)
  • RtR_tRt​ = LPの反応速度(遅いほど潜在スプレッドは広がる)
  • ItI_tIt​ = 在庫圧(LPが片方向に偏っているほど影のスプレッドが広い)

■ 4. 実際のシグナル生成


① シャドウの“乖離”(Gap)を取引する

Gapt=StshadowStGap_t = S^{shadow}_t – S_tGapt​=Stshadow​−St​

意味:

  • Gap > 0 → 表示より実質スプレッドは広い(危険)
  • Gap < 0 → 表示より実質スプレッドは狭い(安全)

トレード判断:

  • Gapが拡大 → レバレッジ下げ、エントリー回避
  • Gapが縮小(0に回帰) → トレードOK、レバレッジ上げ

JadeFOREXのリスク管理の核になる概念。


② Gap のモメンタム

Gt=GaptGapt1G’_t = Gap_t – Gap_{t-1}Gt′​=Gapt​−Gapt−1​

  • Gapモメンタムが+ → 流動性崩壊が加速
  • Gapモメンタムが- → 流動性が戻ってきている

→ 価格よりはるかに早い先行指標。


③ シャドウ・スプレッドの反転(Reversal)

スプレッド反転より 数十ミリ秒〜数秒早く 反転が起きることが多い。

HFTが最も重視する部分。


■ 5. モデル構築の3パターン


① Depth-Based Shadow(板厚モデル)

最も基本的。Stshadow=St+βdepthtS^{shadow}_t = S_t + \frac{\beta}{depth_t}Stshadow​=St​+deptht​β​

depth が減る → シャドウが急拡大
depth が増える → シャドウが急縮小

特にロンドンFIX直前などで強力。


② Market-Impact Shadow(影のインパクト)

オーダーの衝撃(Impact)を逆算し、
LPの“防御的スプレッド”を推定する。Impactt=ksizetλImpact_t = k \cdot size_t^\lambdaImpactt​=k⋅sizetλ​ Stshadow=St+ImpacttS^{shadow}_t = S_t + Impact_tStshadow​=St​+Impactt​

大口注文前にシャドウスプレッドが急上昇する典型がある。


③ LP Response Delay Shadow(反応遅延モデル)

LPのクオート更新遅延を推定し、それをスプレッドに反映。Stshadow=St+γdelaytS^{shadow}_t = S_t + \gamma \cdot delay_tStshadow​=St​+γ⋅delayt​

  • ボラ上昇時に LP が追いつかない → 影が広がる
  • 落ち着くと影が収縮する

■ 6. どう裁定(Arbitrage)に使うのか?


● ① Gap の平均回帰(Mean Reversion)

Gapt0Gap_t \rightarrow 0Gapt​→0

Gap が大きく外れた瞬間が 裁定ポイント

例:
EUROスプレッドは表示上は 0.4pips なのに
シャドウ推定値が 1.0pips → “危険領域”

実際この後、ほぼ必ずスプレッドが跳ねる。


● ② スプレッド・リグレッション裁定と併用

他ペアのシャドウスプレッドを説明変数に加える。

例:SEURshadow=a+bSGBPshadow+ϵS^{shadow}_{EUR} = a + b \cdot S^{shadow}_{GBP} + \epsilonSEURshadow​=a+b⋅SGBPshadow​+ϵ

→ ε(残差)が裁定機会。


● ③ ボラティリティ予測モデルと統合

シャドウスプレッドはボラティリティの先行指標。Volt+1=f(Gapt,Gt)Vol_{t+1} = f(Gap_t, G’_t)Volt+1​=f(Gapt​,Gt′​)

Gap が急上昇 → 価格ボラティリティ爆上がりの前兆。


■ 7. JadeFOREX での実際の使い方(重要)

JadeFOREXでは以下のように使用:

✔ 1. レバレッジ制御のコア

if Gap > threshold:
    leverage = leverage * 0.2

✔ 2. エントリー禁止フィルタ

Gap が拡大している時は絶対に入らない。

✔ 3. スプレッドモメンタムの補強

Shadow が反転 → 実スプレッド反転の予兆 → トレンド発生前に入る。

✔ 4. 流動性クラスタの感知

Shadow が急増 → 流動性クラスターが崩れる直前。


■ 8. 難易度が高い理由

✔ シャドウは直接観測できない

(高度な推計が必要)

✔ depth と LP挙動はノイズが多い

(Kalman Filter や Hawkes過程を使う)

✔ 時間帯依存性が極端に強い

(ロンドン開始 5 分前など特異点が多い)

✔ LPによって特性が異なる

(Axi、IC、CMC、B2Prime などでシャドウ構造が変わる)


■ 9. まとめ(要点)

  • Shadow Spread = 表示スプレッドの背後にある“潜在スプレッド”
  • depth・LP遅延・在庫圧・大口接近で推計する
  • Gap(Shadow − Visible)を裁定シグナルに使う
  • Gapモメンタムはボラ予測に非常に強力
  • JadeFOREXのレバレッジ制御に最適
  • ノイズ除去と推計モデル構築が専門的で難しい

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