JadeFOREXのスプレッド・リグレッション裁定(Spread Regression Arbitrage)について

以下では スプレッド・リグレッション裁定(Spread Regression Arbitrage) を、
JadeFOREX・統計裁定・マイクロ構造の視点から 専門レベル で詳しく解説します。

これは「複数通貨ペアのスプレッド構造に存在する“共通因子(Common Factors)”を統計モデルで捉え、
その均衡からの乖離を裁定する」高度アルゴです。

普通の「価格アービトラージ」ではなく、
“スプレッド同士”の統計的関係性を使う という点が最大の特徴です。


目次

■ 1. Spread Regression Arbitrage とは?

一言でいうと:

複数FXペアのスプレッド(Bid–Askの構造)に対して
統計モデル(回帰)を構築し、
理論値からズレたら裁定する手法。

価格ではなく
スプレッドの統計関係 を狙う点がプロ仕様。


■ 2. なぜスプレッドどうしを回帰するのか?

FX市場では、複数通貨ペアは
“共通の流動性因子” や “LP挙動” を共有しています。

例:
EURUSD と GBPUSD は欧州時間に流動性がそろって増え、
アジア時間には同時に流動性が薄くなります。

つまり:

  • スプレッドは 独立ではなく相関する
  • 時間帯ごとに 複数ペアが同時に広がったり狭くなったりする
  • ボラティリティ・流動性ショックは 複数ペアに波及する

この相関構造を回帰で捉え、
期待される“理論スプレッド” と比較することで
裁定シグナルが生まれます。


■ 3. 回帰モデルの構造

■ 基本回帰式

EURUSD をターゲットとし、
GBPUSD と USDCHF のスプレッドを説明変数にする例:StEURUSD=α+β1StGBPUSD+β2StUSDCHF+ϵtS^{EURUSD}_t = \alpha + \beta_1 S^{GBPUSD}_t + \beta_2 S^{USDCHF}_t + \epsilon_tStEURUSD​=α+β1​StGBPUSD​+β2​StUSDCHF​+ϵt​

ここで:

  • StS_tSt​:スプレッド(Raw / Effective / Liquidity Adjusted のいずれか)
  • β1,β2\beta_1, \beta_2β1​,β2​:スプレッド共通因子の重み
  • ϵt\epsilon_tϵt​:裁定対象となる残差(mispricing)

● 裁定対象は「ε(残差)」

この ε が 通常より大きく外れた瞬間がアービトラージ機会


■ 4. 裁定ルール(Residual Arbitrage 方式)

残差 ε が標準偏差 2σ を超えたらショート

  • ε > 2σ → EURUSD スプレッドは「理論より広すぎる」

Sell: SEURUSD\text{Sell: } S^{EURUSD}Sell: SEURUSD

逆に ε が -2σ より小さいならロング
→ 「理論より狭すぎる」


■ 5. スプレッド回帰裁定が“強力”な理由


✔ 1. 価格裁定より追い風が強い

価格はノイズが大きいが、
スプレッドは流動性・LPアルゴの構造そのもの なので
均衡が崩れるとすぐ戻りやすい。

Mean Reversion(平均回帰)の強さが段違い


✔ 2. LP間挙動のズレが裁定源

LPの

  • クオート速度
  • depth
  • リスクモード
  • 引っ込め率

はペア間で似るのでズレを検知しやすい。


✔ 3. 時間帯依存(Session Effects)が強い

ロンドン → 欧州通貨
NY → USDペア
アジア → JPYペア

こうした“ペア間の共通性”は価格以上にスプレッドに現れる。


✔ 4. スプレッドはマクロイベントの影響が早い

ニュース前後で“スプレッド共通因子”が崩れる。

→ 回帰残差が爆発する → 大きな裁定チャンス。


■ 6. 戦略の3大タイプ


① Cross-Pair Regression(クロスペア回帰)

EURUSD = f(GBPUSD, USDCHF)
AUDUSD = f(NZDUSD) など。

最も一般的。


② Volatility-Adjusted Regression(ボラ補正回帰)

スプレッド × ボラティリティ を回帰するモデル。Stadj=StσtS^{adj}_t = \frac{S_t}{\sigma_t}Stadj​=σt​St​​

こうすると:

  • ボラ高 → スプレッド広くて正常
  • ボラ低 → 同じ広さでも異常

となり裁定精度が上がる。


③ Liquidity-Adjusted Regression(流動性補正回帰)

depth(板厚)を組み込む。Stliq=St1depthtS^{liq}_t = S_t \cdot \frac{1}{depth_t}Stliq​=St​⋅deptht​1​

  • depth薄い → 実質スプレッドは重い
  • depth厚い → 軽い

スプレッドの“実質価値”を近似し、
その共通因子を回帰する。


■ 7. JadeFOREX との統合(本領発揮)

JadeFOREX では回帰残差 ε をそのまま:

  • レバレッジ制御
  • エントリー精度強化
  • Multi-Layer Arbitrage
  • Spread Momentum の補強
  • Liquidity Cluster の予兆
  • Risk Reversal との合成

等に組み込む。

特に強力なのは:

● ① ε (残差)が急拡大 → Liquidity Collapse の予兆

→ レバレッジを即時下げる

● ② ε がゼロに戻る → 市場正常化

→ レバレッジを上げる


■ 8. 最大の難点 ― ノイズとモデル不安定性

スプレッドは周期性が強く、
“回帰係数 β が時間で変動する” のが最大の難点。

そのため:

  • ローリング回帰
  • カルマンフィルタ回帰
  • 状態空間モデル
  • Ridge/Lassoで係数安定化

などが必要になる。

これはFX専門家でも難しい領域。


■ 9. まとめ(重要ポイント)

  • スプレッドには強い共通因子がある
  • 回帰モデルで理論スプレッドを推定
  • 残差 ε が裁定機会
  • 価格裁定より安定して平均回帰しやすい
  • 流動性・LP挙動を反映するため優位性が大きい
  • ノイズ・係数変動の制御が最大の課題
  • JadeFOREX ではレバレッジ制御にも組み込まれる

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