以下では、逆ピラミッディング(平均レバ低減)戦略について、
プロのリスクマネージャー/CTA(商品投資顧問)が実務で使うレベルで
目的 → 仕組み → 数式 → 運用フロー → 注意点 → 最適化
まで体系的に詳しく解説します。
🔶 1. 逆ピラミッディングとは(Reverse Pyramiding)
通常の「ピラミッディング=含み益方向に段階追加」と逆で、
“含み損が発生したらポジションを段階的に減らし、
平均レバレッジを自動的に下げる戦略”
のこと。
別名:
- アンチ・ピラミッド
- リスク減衰ポジション調整
- 分割ディレバレッジ
🔶 2. なぜ必要なのか(明確な合理性)
市場は 順風時より逆風時の方がレバを減らさないと破綻しやすい ため。
逆ピラの目的は明確:
✔ ① ドローダウン時の破綻リスクを劇的に下げる
含み損が出た段階で “減らす” ので、
損失が加速しなくなる。
✔ ② 口座生存率(Survivability)が非常に高くなる
プロは「当てる」より「生き残る」ことを最重要視。
✔ ③ トレンド転換時の損失を吸収しやすい
価格が逆行する場面で無理に耐えない。
🔶 3. 通常ピラミッドとの比較
| 戦略 | 含み益 | 含み損 | レバ変動 |
|---|---|---|---|
| ピラミッディング | 増やす | 増やさない | 含み益方向でレバ上昇 |
| 逆ピラミッディング | 増やさない | 減らす | 含み損方向でレバ低下 |
つまり、前進の時は強く、撤退の時は弱く
という合理的なレバレッジ構造が作れる。
🔶 4. 逆ピラミッディングの基本構造
▼(A)減らしトリガー:一定値幅逆行
例:
- 価格が −1ATR 下落 → 20%削減
- さらに −0.5ATR 下落 → 追加で20%削減
ATR(平均的な真の変動幅)を使う理由
- ボラティリティに応じた自然な分割
- 無意味なノイズで削減しない
▼(B)削減量:固定 or 比例
✔ 固定削減型
逆行1ATRごとに 20% 減らす
✔ 比例削減型(垂直ディレバ)
逆行幅が増えるほど削減率を増やす
例:-1ATRで20% → -2ATRで40% → -3ATRで70%
✔ ボラティリティ連動型
ATRが急増したら削減を強める
ATRが低い時は削減を緩くする
プロ向けの高度戦略。
🔶 5. 逆ピラミッディングのコアとなる数式
■口座の最大リスク量
R = 資金 × 許容リスク率
■初期ポジション量
ATR比例で決める:
Position0 = R / ATR
■削減後のポジション
Position_n = Position_(n−1) × (1 − 削減率)
■削減率のモデル例
固定削減(20%):
cut = 0.2
Position_n = Pos_(n-1) × 0.8
比例削減(逆行ATRに比例):
cut = min(1, k × ATR逆行数)
(k=0.2〜0.3程度)
🔶 6. 数値例(BTC)
◆前提
- 資金100万円
- R = 1% = 1万円
- BTC価格:40,000
- ATR = 800
- 初期サイズ:1万円/800 = 0.0125BTC
逆行すると削減:
● 逆行 −800(1ATR)
→ 20%カット
0.0125 × 0.8 = 0.0100 BTC
● 逆行 −1600(2ATR)
→ さらに20%カット
0.0100 × 0.8 = 0.0080 BTC
● 逆行 −2400(3ATR)
→ さらに20%カット
0.0080 × 0.8 = 0.0064 BTC
✔ 結果:逆行が続くと「スッとレバが落ちる」
破綻リスクが急減する一方、
トレンド転換後に再びレバを戻しやすい。
🔶 7. 実務での運用フロー(プロがやる方法)
Step1:ATR を用意(14〜21期間)
チャート周期に合わせて設定。
Step2:初期レバを決定
ATR比例モデルで自然に決定。
Step3:逆行ATRの発生ごとに削減
- 指値 or 通知
- 自動化ではアラート+API
Step4:方向優位が復活したら再構築
→ ピラミッディングと組み合わせられる
(この組み合わせは“ダイナミックレバレッジ制御”)
🔶 8. 逆ピラミッディングの優れた効果
✔① 資金曲線のドローダウンが浅くなる
逆行時の損失が 線形ではなく、減衰する。
✔② クロス証拠金との相性が非常に良い
含み損によるマージン圧迫を緩和。
✔③ 長期生存率が上がる(ゲーマーのHP管理と同じ)
攻めるときは攻め、
危ないときは守るという“理性の自動化”。
🔶 9. 逆ピラミッディングの失敗例(やりがちな“罠”)
❌ ナンピンと混同する
逆ピラは 減らす 戦略。
ナンピンは 増やす 戦略。
混ぜると破滅する。
❌ 削減幅が大きすぎて利益相場でもすぐ減る
→ 戦略の旨味が消える
→ “削減ポイントの精度” が極めて重要
❌ 削減後にすぐ元の量へ戻す(過剰リバランス)
→ 手数料増大&チョップで削られる
🔶 10. 最適化(プロ向け)
▼① トレンド判定と連動
- 下落で逆ピラ → 上昇でピラミッド
- 自動化すると「トレンドフォロー+リスク管理の完全体」になる
▼② ATRのスムージング
ノイズ削減で過剰削減を防ぐ:
ATR_s = EMA(ATR, n)
▼③ 削減率の動的調整
ボラ急増時(ATR↑)→ 削減率↑
ボラ低下時 → 削減率↓
▼④ 最大残存ポジションを設定
例:
最低でも30%は維持
→ 反発後の再建が容易になる。
🔶 11. 戦略まとめ(要点)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的 | 含み損時にレバを自動的に落として破綻リスクを防ぐ |
| 基本 | −1ATRごとに一定割合カット |
| ベネフィット | DD低減、生存率向上、精神的安定 |
| 注意点 | カット幅の過大、ナンピンとの混同 |
| 最適化 | ATRスムージング・動的削減・最大残存率 |

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