IS6FXのポートフォリオ分散+相関通貨ペア裁定戦略

ポートフォリオ分散+相関通貨ペア裁定戦略(Arbitrage Strategy with Correlated Pairs)」は、
トレーディングの中でも特にリスク管理・安定収益化を目指す上級者向けの戦略です。

これは「複数通貨を組み合わせてリスクを平滑化し、相関関係のズレを利用して利益を取る」という考え方に基づきます。


以下では、
📘理論背景 → 実践構築 → 裁定の仕組み → 実例 → 注意点 → 応用法
の順に、わかりやすく深掘りして説明します。


目次

🧭 基本コンセプト

「通貨ペア間の相関関係」を利用して、ポートフォリオ全体のリスクを抑えつつ、相関の“ズレ”から利益を取る戦略。

つまり:

  • 高相関のペア(例:EUR/USDとGBP/USD)が一時的にズレたら、
  • 割安な方を買い、割高な方を売る、
  • 相関が元に戻る(スプレッド収束)時に利益確定する。

これが「相関裁定(Statistical Arbitrage)」の基本です。


💡 戦略の2つの柱

要素説明
ポートフォリオ分散複数通貨・市場にポジションを分散してリスクを低減(例:ドル・ユーロ・オセアニア系など)
相関通貨ペア裁定相関のズレ(乖離)を短期的に利用してリターンを狙う(統計的裁定取引)

この2つを組み合わせることで、
片方が逆行しても全体で安定する設計」が可能になります。


📈 相関の基本と測定方法

相関とは、2つの通貨ペアの価格変動がどれくらい似ているかを示すもの。

相関係数の計算(Pearson相関)

  • 値域:−1.0 ~ +1.0
  • +1.0:完全に同方向
  • −1.0:完全に逆方向
  • 0:無相関

代表的な相関通貨ペア

通貨ペアA通貨ペアB相関傾向
EUR/USDGBP/USD高相関(+0.80〜+0.95)
AUD/USDNZD/USD高相関(+0.85前後)
USD/JPYCHF/JPY中相関(+0.60〜+0.75)
USD/JPYEUR/USD負相関(−0.50前後)

👉 この関係性は時間経過やニュースで変化するため、ローリング相関を取るのが実践的です(例:過去200本分で算出)。


⚙️ 戦略構築の流れ

① 相関ペアの選定

  • 相関係数 |r| ≥ 0.8 程度のペアを選ぶ
    (EUR/USD & GBP/USD、AUD/USD & NZD/USDなど)

② 相関スプレッド(乖離)の定義

「2通貨ペアの価格差(スプレッド)」を観察し、
平均からどれくらい離れているかを統計的に測定します。

Spread(t) = Price_A(t) - β * Price_B(t)

(βは回帰係数=価格変動比率)

③ 乖離の発生(エントリー)

  • スプレッドが平均から±2σ(標準偏差)以上に乖離したら:
    • Aが高く、Bが低ければ「Aを売ってBを買う」
    • Aが低く、Bが高ければ「Aを買ってBを売る」

④ 収束(エグジット)

  • スプレッドが平均付近に戻ったら両方決済(利確)。

🧩 具体例:EUR/USD vs GBP/USD

  1. 過去30日間の相関係数 = +0.91
  2. 回帰分析で β ≈ 1.1
  3. 現在:
    • EUR/USD = 1.0800
    • GBP/USD = 1.2600
    • スプレッド = 1.0800 − 1.1×1.2600 = −0.3060(過去平均−0.2950)

→ 現在のスプレッドが平均より1σ下(過小評価)
EUR/USDロング+GBP/USDショート
→ 乖離が平均に戻れば利益確定。


💰 ポートフォリオ分散の実装

1️⃣ 分散の軸を複数持つ

  • 通貨軸分散:USD系・JPY系・EUR系をバランス良く配置
  • 時間軸分散:短期裁定と中期ポジションを併用
  • 地域軸分散:欧州系+オセアニア系+北米系など

2️⃣ リスク寄与を平準化

各通貨ペアのボラティリティ(ATR)を考慮してロット調整。

例:

Position Size = k / ATR

(高ボラ通貨=小ロット、低ボラ通貨=大ロット)

3️⃣ 相関ヘッジ構築例

  • ロング:EUR/USD、AUD/USD
  • ショート:GBP/USD、NZD/USD
    → 全体でドル買い・売りをある程度中和。

📊 優位性と期待値

項目裁定トレード
勝率高い(70〜85%程度)
1回あたり利益小さい(0.2〜0.5%)
損切りスプレッド乖離継続時(3σなど)
向いている市場安定したレンジ相場、指標が少ない時期
向いているトレーダー機械的・統計的トレード志向者

⚠️ 注意点とリスク

リスク内容対策
相関崩壊経済政策やニュースで通貨連動が崩れる定期的に相関再計算(ローリングウィンドウ)
流動性リスク一方だけスリッページ・スプレッド拡大高流動ペア限定(主要通貨ペア)
βの変化相対的強弱が変わる週次で回帰係数更新
両建てスワップ差スワップポイントでマイナス方向にコスト長期保有は避ける/スワップ考慮した設計
レバレッジ過剰両建てでも実質証拠金は2倍必要ロット管理を厳格に

⚙️ 応用:統計的裁定のEA(擬似コード例)

if correlation(EURUSD, GBPUSD) > 0.8:
    spread = price("EURUSD") - beta * price("GBPUSD")
    mean, std = rolling_stats(spread, 200)
    if spread > mean + 2*std:
        open_short("EURUSD")
        open_long("GBPUSD")
    elif spread < mean - 2*std:
        open_long("EURUSD")
        open_short("GBPUSD")
    elif abs(spread - mean) < 0.5*std:
        close_all()

👉 MT5やPython(pandas+statsmodels)で再現可能です。


🧮 まとめ

要素内容
戦略名ポートフォリオ分散+相関通貨ペア裁定戦略
基本概念高相関ペアの乖離を利用した統計的裁定
使用データ相関係数・回帰係数・標準偏差(σ)
強み低リスク・安定リターン・トレンド依存度低
弱点相関崩壊リスク・低収益性
時間軸短期〜中期(1時間〜日足)
向いている相場レンジ or 安定トレンド期
向いている人分析好き・ロジカル派トレーダー
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