Tradeviewの早期モメンタムスキャルピング + 板情報フィルター

Tradeviewの「FXの早期モメンタム・スキャルピング + 板情報フィルター(Order Book Filter)」は、
プロップトレーダーや機関の超短期アルゴ戦略の中でも中核的な手法で、
特に高頻度(ナノ〜マイクロ秒単位)でのエントリー判断や、
値動きが出る直前に入る」ことを目的としています。

以下では、

  • 戦略の基本構造
  • モメンタムの早期検知手法
  • 板情報(オーダーブック)の活用方法
  • 実戦的ロジックとパラメータ設計
  • 注意点・発展型
    を体系的に解説します。

目次

🔍 1. 戦略の全体像:早期モメンタム・スキャルピングとは?

🎯 目的

「トレンドが出る前の“圧力(Order Flow)”を検知して、
数pips〜10pips程度の初動を高速で抜き取る」

これは、通常のモメンタム戦略の“1段階前”を狙う発想です。
通常のモメンタム系(RSI・MACD)は価格が動いた後
に反応しますが、
ここでは**「板(オーダー状況)」+「ティックフロー」**で“動く直前”を察知します。


⚙️ 2. モメンタムの早期検知構造

💡 通常のモメンタムとの違い

項目通常モメンタム早期モメンタム
情報源価格履歴オーダーフロー(気配値・板)
検出タイミング動いた後動く前
ツールRSI / MACD板厚・ティック方向・約定速度
ターゲット中短期トレンド数pipsの初動

📊 3. 板情報(オーダーブック)とは?

FXではECN/STPブローカーを通じて「Depth of Market (DOM)」や「Order Book」データを参照できます。

板情報の構造

要素内容
Bid Depth(買い板)買い注文の層・数量・価格
Ask Depth(売り板)売り注文の層・数量・価格
Order Imbalance(オーダー不均衡)Bid量とAsk量の差分
Execution Speed(約定速度)約定の連続性・ティック更新間隔

板情報から見えるもの

  1. どちらに圧力がかかっているか(Bid vs Ask)
    → 上昇圧力 or 下落圧力
  2. 吸収(吸い込み) or 売り叩き(スプーフィング)
    → 板が厚く見えても、一瞬で消える場合は「偽の流動性」
  3. 連続約定方向(Buy Hit / Sell Hit)
    → 実際の取引方向を確認

⚡ 4. モメンタム + 板フィルターの基本ロジック

この戦略の基本形は次のように表せます:

(1)板圧力優勢 → (2)ティックモメンタム発生 → (3)スプレッド安定 → エントリー


【STEP 1】 板の不均衡検知

オーダー不均衡率: Imbalance=BidVol−AskVolBidVol+AskVol\text{Imbalance} = \frac{BidVol – AskVol}{BidVol + AskVol}Imbalance=BidVol+AskVolBidVol−AskVol​

Imbalance値状態意味
+0.3以上買い圧力優勢上昇モメンタム準備中
-0.3以下売り圧力優勢下落モメンタム準備中

【STEP 2】 ティックモメンタム検出(超短期モメンタム)

ティックレベルでの価格差(またはティック回数方向)を監視: Mt=Pt−Pt−nnM_t = \frac{P_t – P_{t-n}}{n}Mt​=nPt​−Pt−n​​

条件:

  • 過去nティック(例:20ティック)での変化率が一定以上
  • Bid/Ask更新間隔が短縮(=高速ティック)
  • 板不均衡と方向一致

「勢い+流動性の傾き」=本物のモメンタム初動


【STEP 3】 スプレッド安定確認(フィルター)

早期スキャルピングでは、スプレッド拡大=ノイズ or アルゴ衝突の可能性。

条件:

  • スプレッドが直近平均の1.5倍以内
  • 約定速度が一定(0.2秒以内に複数ティック)

→ この条件下でエントリーのみ実行。


📈 5. 具体的なトレードシナリオ(例)

項目状況
通貨ペアEUR/USD
時間帯ロンドン立ち上がり(16:00〜17:00 JST)
板状況BidVol:1200、AskVol:600(Imb=+0.33)
ティック方向直近20ティック中15回が上昇方向
スプレッド0.4pips(平均0.5以内)
条件合致✔買い圧力 + モメンタム発生

Buyエントリー @ 1.0852
決済 @ 1.0858(+6pips)

この6pipsを1〜3分以内に狙う、超短期モメンタムスキャルピング。


🧮 6. 実装ロジック(疑似コード)

# pseudo: Early Momentum Scalping + Order Book Filter

if order_imbalance > 0.3:  # 買い圧力
    if tick_momentum > threshold and spread < spread_limit:
        buy()  # 上昇モメンタム初動
elif order_imbalance < -0.3:  # 売り圧力
    if tick_momentum < -threshold and spread < spread_limit:
        sell()

追加で「約定速度」や「板吸収検知」も条件化可能。


🧭 7. 戦略パラメータ(実践的目安)

要素設定値(例)説明
ティック窓幅20〜50直近ティックの方向分析
板不均衡閾値±0.25〜0.4圧力判定の感度
スプレッド制限通常値の1.5倍以内ノイズ除外
損切幅2〜3pips初動反転リスク対策
利確幅5〜8pipsRR ≈ 2:1を維持
時間帯ロンドン・NYオープン板更新が活発で優位性高

🧠 8. 裁量判断+アルゴ統合のポイント

  1. 板の厚みの“偏り”を目で確認
    • Bid側が厚くてもAskが急に増える瞬間=反転注意
  2. 約定音やティック連続性
    • 実需系の約定が集中する瞬間にだけ入る
  3. アルゴ衝突の時間帯(指標直前)は回避
    • 板ノイズ多発・スプレッド異常化

⚠️ 9. 注意点とリスク管理

リスク内容対策
偽板(Spoofing)一瞬だけ厚みを見せて消える約定履歴と整合を取る
高頻度ノイズティックが多すぎて方向不明平滑化 or 時間制限
スプレッド急拡大指標前などスプレッド制限条件を厳格化
レイテンシー約定遅延で滑りECN/低レイテンシ環境必須

🔧 10. 拡張型:アルゴ実装・応用方向

  1. MQL5 / cTraderでのOrderBook API統合EA
    • 板厚・不均衡・ティックモメンタムをリアルタイム処理
  2. ティックデータ × 機械学習(LightGBM / XGBoost)でのモメンタム予測
    • 直前の板傾きや約定連続性から上昇確率を算出
  3. 通貨ペア相関+板圧力連動検知
    • 例:EUR/USD買圧力上昇 → GBP/USDも先行買い

💡 まとめ:この戦略の本質

項目内容
🎯 目的値動き“直前”のモメンタムを板情報で察知し、数pipsを取る
⚙️ 構造板圧力(Order Imbalance)+ティックモメンタム+スプレッド制限
🔍 優位性インジ系より早く反応・高精度な初動検出
🧱 前提高速・低スプレッド環境+板データアクセス
💬 時間軸数秒〜数分の高速スキャルピング
目次