「超短期スキャルピング with 流動性・スリッページ監視フィルター」は、
現代の高速FX市場(特にロンドン・NY時間帯)でプロップトレーダーや高頻度トレーダーが実際に使う考え方に近い、非常に実践的なアプローチです。

ここでは、
👉 戦略の基本構造
👉 流動性フィルターの意味と実装
👉 スリッページ監視の重要性
👉 エントリー/エグジットの流れ
👉 リスク管理・通貨ペア特性
の順に、超短期(数秒〜数分)スキャルの観点から詳しく解説します。
🔶 1. 戦略の概要:ミリ秒単位の“条件つきスキャル”
この戦略の基本的な思想はこうです:
「値動きの勢い+流動性の厚み」を利用して、最もスプレッドが安定した瞬間に極短期で利益を抜く」
つまり、
単なるチャート分析(ローソク足・テクニカル)だけでなく、
板情報・ティック密度・スリッページ発生状況をリアルタイムで監視し、
「約定の質」が高いタイミングだけでエントリーする、という発想です。
🔶 2. 戦略の適用時間帯と特徴
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 対象時間帯 | ロンドン・NY重複時間(21:00〜24:00 JST) |
| 想定時間足 | 1分足 or ティックチャート(秒足) |
| 取引時間 | 数秒〜3分以内(平均1分前後) |
| 通貨ペア | EUR/USD、GBP/USD、USD/JPY(スプレッドが狭い通貨) |
| 手法タイプ | モメンタム型 or リバウンド型(いずれも順張り前提) |
🔶 3. 流動性フィルター(Liquidity Filter)
✅ 概要
流動性が低い時間帯・タイミングでスキャルを行うと、
- スプレッドが一瞬で広がる
- 約定が遅れる(リクオート発生)
- スリッページが頻発
といった“構造的リスク”が起きやすいです。
そのため、「流動性が十分にある状態」だけでエントリーするフィルターを設けます。
✅ 流動性判定の具体的基準
| フィルター項目 | 条件例 |
|---|---|
| スプレッド監視 | スプレッドが平均より+20%以内(例:EUR/USD 0.8pips以下) |
| ティック密度 | 過去10秒でティック数 > 平均の80%以上(=取引活発) |
| 板厚(Depth) | 上下5ティック以内に一定以上の注文数量が存在 |
| 出来高(Volume) | 直近1分の出来高が過去10分平均の1.2倍以上 |
TradingViewやcTrader、MT5などでは「ティック量」や「出来高インジケータ」で擬似的に可視化可能です。
本格的には、LP(Liquidity Provider)データまたはLevel II Order Book(板)情報を利用します。
🔶 4. スリッページ監視フィルター(Execution Quality Filter)
✅ スリッページとは
注文価格と実際の約定価格の乖離。
特に成行スキャルピングでは、
- 相場急変時や薄い板の瞬間に
- 数pipsのスリップが頻発
し、それが「優位性の損失」になります。
✅ フィルター実装の考え方
| 条件 | 説明 |
|---|---|
| 平均スリッページ監視 | 直近10トレードの平均スリップ幅 < 0.5pips |
| 異常スリップ検知 | 1回でも2pips以上のスリップが発生 → 以降の取引を一時停止(N分間) |
| 約定遅延監視 | 約定遅延 > 100ms でフィルターアウト(高頻度業者では重要) |
実際のEAやAPI接続では、ブローカーの約定ログを解析して自動的に監視することが可能です。
🔶 5. エントリーの基本構造(例:順張りモメンタム型)
✅ ① 市場状態のスクリーニング
- スプレッド ≤ 1.0pips
- ティック密度高(10秒間に50ティック以上)
- ATR(14) / 平均ATR > 1.2(短期的ボラ上昇)
→ 条件を満たした通貨ペアのみ対象。
✅ ② モメンタム確認
- RSI(3 or 5)> 70(上昇)または < 30(下降)
- EMA(10) が EMA(30) を上抜け or 下抜け(クロス)
- ティックベースの出来高増加確認
→ 瞬間的な方向性一致で成行エントリー。
✅ ③ エグジット
- 利確:+3〜5pips
- 損切り:−2pips(リスクリワード 1:1.5 目安)
- 時間制限:エントリー後60秒経過で強制クローズ(勢い失速を防ぐ)
🔶 6. EAロジック(擬似コード例)
if spread < 1.0 and tick_density > avg_tick_density * 0.8:
if ATR(14) > ATR_avg * 1.2:
if RSI(3) > 70 and EMA10 > EMA30:
if avg_slippage < 0.5:
buy_market()
set_stoploss(2)
set_takeprofit(5)
このように「市場の質(流動性・スリップ)+勢い」で条件を絞ると、
スキャルの勝率・安定性が大きく向上します。
🔶 7. リスク管理と最適化のポイント
| 項目 | 解説 |
|---|---|
| スプレッド監視必須 | 0.5→1.2pipsなど急変時はトレード禁止。 |
| トレード回数 | 多すぎると手数料・スリップの累積で優位性消失。1時間に2〜5回が限界。 |
| 通貨ペア | EUR/USD、USD/JPYが最も適。GBP/JPYなど高ボラは“爆益 or 即死”リスク。 |
| ブローカー選択 | ECN(True Market Execution)で平均スリップが小さい業者が必須。 |
| 取引環境 | VPS利用、Ping < 50msが望ましい。 |
🔶 8. 実例イメージ
通貨:EUR/USD
時間:ロンドンNY重複(22:10 JST)
条件:
- スプレッド:0.6pips
- ティック密度:通常比1.4倍
- ATR上昇:+25%
- RSI(3):78
- スリップ:過去10トレード平均0.3pips
→ エントリー:成行ロング
→ +4.2pipsで利確、約定遅延なし。
→ 条件崩壊(スプレッド拡大)時に自動停止。
🔶 9. 応用:板情報を利用した「流動性トリガー」
さらに上級者は、板の不均衡(Bid/Askの厚みの偏り)をトリガーとして利用します。
例:
- 買い板が売り板の3倍 → 短期上方向優位
- 売り板優勢 → ショート圧力強
これを「オーダーブック・スキャル」と呼び、特にcTraderやMT5 ECN環境で非常に有効です。
🔶 10. まとめ
| 要素 | 意味 |
|---|---|
| ブレイクの勢い | 短期モメンタムを捉える核 |
| 流動性フィルター | “約定の質”を担保してトレードノイズを減らす |
| スリッページ監視 | EAや裁量トレードで再現性を高める |
| 時間制限 | 勢いが消える前に手仕舞いする |

