「短期レンジ逆張り戦略(RSI+価格帯ボックス)」は、
トレンドが明確でない(横ばい・ボックス相場)局面で利益を積み上げるための典型的戦略です。
順張り型(トレンドフォロー)とは対照的に、
**「価格がレンジ内で行き過ぎた瞬間を狙って反転を取る」**という考え方に基づきます。

以下で、実践的・数理的な観点から詳しく解説します。
🧭 1. 戦略の基本コンセプト
🎯 目的:
- トレンドが不明瞭な「もみ合い(レンジ)」相場で、
過剰な売られすぎ・買われすぎからの反発(逆張り)を狙う。
🔹構成要素:
- RSI(Relative Strength Index)
→ 「行き過ぎ」の判定に使うオシレーター。 - 価格帯ボックス(Price Box)
→ 「現在がレンジ内か、ブレイクしたか」を定義する枠組み。
これらを組み合わせることで、
- RSIで反転ポイントを見極め、
- ボックスで「レンジ内限定」で取引することでダマシを減らす、
という構造になります。
📈 2. RSI(相対力指数)の基礎
式:
RSI=100×UU+DRSI = 100 \times \frac{U}{U + D}RSI=100×U+DU
- UUU:一定期間の上昇幅の平均
- DDD:一定期間の下落幅の平均
解釈:
| RSI値 | 意味 | トレード示唆 |
|---|---|---|
| 70以上 | 買われすぎ | 売りシグナル(ショート) |
| 30以下 | 売られすぎ | 買いシグナル(ロング) |
| 50前後 | 中立 | 様子見 |
期間は通常14(RSI(14))が基準ですが、短期トレードでは5〜9が多用されます。
🧱 3. 価格帯ボックス(Price Box)の設定方法
価格ボックスとは、一定期間の高値・安値レンジを視覚的に囲んだものです。
単純には「直近N本の高値・安値」を使います。 Box High=max(Pt,Pt−1,…,Pt−N)Box Low=min(Pt,Pt−1,…,Pt−N)\text{Box High} = \max(P_t, P_{t-1}, \ldots, P_{t-N}) \\ \text{Box Low} = \min(P_t, P_{t-1}, \ldots, P_{t-N})Box High=max(Pt,Pt−1,…,Pt−N)Box Low=min(Pt,Pt−1,…,Pt−N)
例:
直近20本の高値・安値を取って、上下レンジを定義。
価格がその範囲に収まっているうちは「レンジ相場」とみなします。
⚙️ 4. 売買ルール(基本構造)
🟩 買い(ロング)条件:
- 価格が「ボックス下限」に近い(例:BoxLow+α以内)
- RSIが30以下(売られすぎ)
- ボックスを下抜けていない(=レンジ内)
→ エントリー:買い
→ 利確:ボックス中央 or RSIが50到達
→ 損切り:ボックス下抜け(終値で割り込み)
🟥 売り(ショート)条件:
- 価格が「ボックス上限」に近い(例:BoxHigh−α以内)
- RSIが70以上(買われすぎ)
- ボックスを上抜けていない
→ エントリー:売り
→ 利確:ボックス中央 or RSIが50到達
→ 損切り:ボックス上抜け(終値で突破)
📊 5. 戦略パラメータ例(5分足・FX想定)
| パラメータ | 推奨値 | 説明 |
|---|---|---|
| RSI期間 | 7 | 短期の過熱感を敏感に捉える |
| ボックス期間 | 20本 | 直近のレンジを定義 |
| ボックス幅閾値 | ±0.2% | エントリー許容範囲 |
| 利確 | 中央線 or ±10pips | 確実に取るスタイル |
| 損切り | ボックスブレイク+2pips | ブレイク時は即撤退 |
| フィルター | ADX < 20 | トレンドが弱い時のみ有効 |
🔄 6. 戦略イメージ(フロー)
if ADX < 20: # レンジ判定
if RSI < 30 and price ≈ BoxLow:
open_long()
elif RSI > 70 and price ≈ BoxHigh:
open_short()
else:
skip_trade() # トレンド中は回避
このように「RSI × ボックス × トレンドフィルター(ADX)」の3要素で構成します。
📐 7. 数理的視点:レンジ反転の期待値構造
価格のレンジ滞留確率 PrangeP_{range}Prange は、
トレンド発生確率 PtrendP_{trend}Ptrend よりも通常高い(特に短期足では 70〜80% 程度)。
そのため、
「レンジ継続を前提に逆張り」する戦略は、勝率が高く(60〜70%前後)、
ただしリスクリワード比は低め(1:0.6〜0.8)に設計されます。 E[PL]=Pwin×G−(1−Pwin)×LE[PL] = P_{win} \times G – (1 – P_{win}) \times LE[PL]=Pwin×G−(1−Pwin)×L
例:
- 勝率 Pwin=0.65P_{win}=0.65Pwin=0.65
- 利益幅 G=10pipsG=10pipsG=10pips
- 損失幅 L=12pipsL=12pipsL=12pips
→ 期待値 E[PL]=0.65×10−0.35×12=+1.1pipsE[PL] = 0.65×10 – 0.35×12 = +1.1pipsE[PL]=0.65×10−0.35×12=+1.1pips
(=わずかに正の期待値を狙う構造)
📉 8. 実践的な最適化ポイント
| 項目 | 内容 | 推奨設定 |
|---|---|---|
| レンジ検出 | ADXやボリンジャーバンド幅を使ってトレンド回避 | ADX<20 or BB幅<0.8% |
| RSI閾値調整 | ボラティリティが低い市場では60/40を採用 | 通貨ペア別最適化 |
| ボックス期間 | 時間軸によって調整 | 5分足:20本 / 15分足:30本 / 1時間足:40本 |
| 部分利確 | 半分をボックス中央で利確、残りをトレイル | 損益曲線を安定化 |
| フェイク回避 | 1本足終値でのブレイクを確認してから損切り | ヒゲ抜け回避に有効 |
🧠 9. メリット・デメリット
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 勝率 | レンジ継続を前提とするため高い | トレンド発生時に連敗しやすい |
| 安定性 | 価格変動が小さい局面で機能 | 成功幅が限定的 |
| 再現性 | 明確なルール化が可能 | 方向性の強い相場では通用しない |
| 自動化適性 | RSIと価格ボックスは数値管理が容易 | フィルタリング精度が重要 |
⚙️ 10. 応用発展例
- ボラティリティ調整RSI
- RSI値をATRでスケーリングし、過熱感を正規化。
- マルチタイムフレーム確認
- 上位足(例:1時間足)がレンジなら下位足(5分)で逆張り。
- AI/クラスタ分析応用
- 価格帯ボックスの幅とRSI波形から、レンジの「寿命」を分類。
- 平均回帰モデル(Mean-Reversion)併用
- 統計的手法(Zスコア、Bollinger %bなど)を追加。
💬 まとめ
短期レンジ逆張り(RSI+ボックス)戦略は、
トレンドが停滞する相場で「行き過ぎ」を定量的に捉え、
高勝率で細かく利益を積み上げる安定型手法。
- RSI → 行き過ぎ判定
- 価格ボックス → 取引範囲限定(リスク管理)
- ADX/ボリンジャー → トレンドフィルター
この組み合わせにより、
**「ノイズの中で規律を見出す」**戦略が構築できます。






