IFCmarketsの固定スプレッド+移動平均を使った「シンプルトレンドフォロー戦略」

固定スプレッド+移動平均を使ったシンプルトレンドフォロー戦略」は、
FX・株価指数・コモディティなど、ほぼすべての流動性市場で通用する基本型の順張り戦略です。
派手さはありませんが、安定性・再現性・自動化のしやすさに優れており、初心者からシステムトレーダーまで幅広く活用されています。

以下で、順を追って体系的に解説します。


目次

🧭 1. 戦略の基本コンセプト

🔹目的:

  • 明確なトレンドをシンプルに追随する
  • 複雑なインジケータを排し、「価格と移動平均」だけで判断。
  • 固定スプレッド(=取引コスト一定)環境を前提にすることで、
    コスト面の不確実性を排除し、
    トレンド検出精度そのものに集中する。

⚙️ 2. 固定スプレッドを採用する意義

固定スプレッドとは、取引コスト(Bid/Ask差)が常に一定である取引環境を指します(例:USD/JPY=0.3pips固定など)。

項目メリット意味合い
安定した取引コスト変動スプレッドによるランダム性を除外トレード結果の再現性が高まる
バックテスト精度向上コストを一定値でモデル化可能過去検証の信頼性が高い
短期順張りに最適発注頻度が高くてもコスト計算が単純スキャル~スイング間に適用可能

つまり、シンプルなトレンドフォローを純粋に評価できる環境を整えるための前提条件になります。


📉 3. 戦略の構成要素

✅ 主要インジケータ:

  • 移動平均線(MA)
    • 単純移動平均(SMA)または指数平滑移動平均(EMA)
    • 短期・長期の2本を組み合わせるのが基本(例:20日と50日)

✅ 主要ルール:

  • ゴールデンクロス/デッドクロス判定
    • 短期線が長期線を上抜け → 買い(ロング)
    • 短期線が長期線を下抜け → 売り(ショート)
  • 固定スプレッド前提でエントリー/エグジット
    • スリッページを考慮しない
    • 損益計算をシンプルに保つ

🧮 4. 基本ロジック(擬似コード)

short_ma = MA(close, 20)
long_ma  = MA(close, 50)

if short_ma > long_ma and not position:
    open_long()
elif short_ma < long_ma and not position:
    open_short()

# 利確・損切り設定(固定スプレッド考慮)
take_profit = entry_price + TP
stop_loss   = entry_price - SL

ここで、TP・SLは固定幅(例:TP=50pips、SL=30pips)に設定することで、
スプレッドによる変動コストを無視して単純な「トレンド検出性能」を評価できます。


📈 5. 具体的な設定例(FX・USDJPY想定)

パラメータ説明
短期MA20トレンド変化の早期検知用
長期MA50大局的方向性の把握
固定スプレッド0.3pips想定取引コスト
利確幅(TP)50pipsトレンドの平均波幅を基準
損切り幅(SL)30pipsトレンド反転リスクに対応
ポジションサイズ1%ルール総資金の1%リスク

📊 6. トレードの流れ(シナリオ例)

🟢 買いシナリオ(ロング)

  1. 20MAが50MAを上抜け(ゴールデンクロス)
  2. 現在価格が両MAより上 → 上昇トレンド確定
  3. 買いエントリー
  4. ストップロス=直近安値−30pips
    利確=+50pips
  5. 移動平均が再度クロスしたら反転(ドテン)または決済

🔴 売りシナリオ(ショート)

  1. 20MAが50MAを下抜け(デッドクロス)
  2. 価格が両MAより下 → 下落トレンド確定
  3. 売りエントリー
  4. ストップロス=直近高値+30pips
    利確=−50pips

📐 7. 戦略の特徴と最適化ポイント

観点内容調整方法
反応速度短期MAを短くするほど早期検知(ノイズ増)10–20期間で調整
持続性長期MAを長くするとダマシ減少50–100期間で調整
コスト影響固定スプレッドのため評価が安定コスト固定値をバックテスト時に明示
フィルターATRやADXを併用し、トレンド強度でエントリー制限「強いトレンドのみ参加」に最適

📉 8. 数理的背景(トレンド検出と移動平均)

移動平均は、価格系列 PtP_tPt​ に対して次のように定義されます: MAn(t)=1n∑i=0n−1Pt−iMA_n(t) = \frac{1}{n} \sum_{i=0}^{n-1} P_{t-i}MAn​(t)=n1​i=0∑n−1​Pt−i​

トレンドフォローの信号(シグナル)は: St=sign(MAshort(t)−MAlong(t))S_t = \text{sign}(MA_{short}(t) – MA_{long}(t))St​=sign(MAshort​(t)−MAlong​(t))

これにより、

  • St=+1S_t = +1St​=+1:上昇トレンド
  • St=−1S_t = -1St​=−1:下降トレンド

となり、シグナル変化時にポジションを反転するシンプルな構造になります。


🧠 9. 戦略のメリット・デメリット

項目メリットデメリット
シンプル構造再現性が高く、自動化しやすいトレンドレス(レンジ)相場に弱い
固定コストコスト変動がないため、テスト精度が高い変動スプレッド市場では想定誤差が出やすい
順張り型トレンドの本流に乗りやすい突発的なニュースイベントに弱い
汎用性すべての資産クラスに適用可能最適パラメータは市場ごとに異なる

🔍 10. 応用・発展アイデア

  1. ボラティリティ連動型MA
    • 移動平均期間をATRに応じて動的に変化
      (ボラティリティが高いときは長く、低いときは短く)
  2. マルチタイムフレーム判定
    • 1時間足で上昇トレンド、5分足で押し目拾い
  3. トレーリングストップ併用
    • トレンド維持中はトレーリングで利益を伸ばす
  4. ファクター分析組込
    • 移動平均信号にファンダメンタルスコアを掛け合わせる(例:金利差、EPS成長率)

💬 まとめ

固定スプレッド+移動平均戦略は、
価格トレンドの純粋な「慣性(Momentum)」を、
コスト変動の影響なしで追跡する最も基本的なトレンドフォロー戦略。

  • 固定スプレッド → 成績評価の透明性と安定性
  • 移動平均クロス → トレンド方向の単純かつ堅実な判断基準
  • TP/SL固定+トレーリング → 実用性とリスク制御のバランス
目次